NPB合同トライアウト(二回目)を観てきた。
この日のトライアウトの段取りを説明しておこう。この日の受験者は投手が7人で、野手が9人。
野手9人の打順は決まっており、順番に打席に入る。投手も順番が決まっており、一人当たり5人の打者と続けて対戦する。前回は人数も多く時間を短縮するためかカウント1-1からのスタートだったそうだが、今回は0-0から。アウトカウントは常にノーアウトという設定で、打者は出塁したら塁に残って走者となるが、投手が代わるごとに無死走者無しの状態から始まる。
守備は野手の受験者が守り、人数が足りない分は地元ファイターズのコーチや元選手の職員らが守備につく。打順が近づいた選手は守備位置から離れ、打席に立つ準備を始める。審判員は球審のみ。攻守交代の様なインターバルはなく、投手が代わるときに投球練習が行われる他は特に中断無く進められた。
受験者は下記の通り。
【投手】※登板順門倉健(ドラゴンズ~旧バファローズ~ベイスターズ~ジャイアンツ~米カブスマイナー~韓国SKワイバーンズ~同三星ライオンズ~伊達聖ヶ丘病院硬式野球部)
佐竹健太(カープ~ゴールデンイーグルス)
石川俊介(タイガース)
久米勇紀(ホークス~ジャイアンツ)
高田周平(タイガース育成選手~信濃グランセローズ)
吉岡興志(タイガース育成選手)
斎藤圭祐(ジャイアンツ~ジャイアンツ育成選手)
※青文字は左投手。
【野手】※打席順渡辺正人(マリーンズ)
生山裕人(マリーンズ育成選手)
高森勇気(ベイスターズ)
佐伯貴弘(ベイスターズ~ドラゴンズ=2011年限り退団)
古木克明(ベイスターズ~バファローズ=2009年限りで退団、格闘家に転身)
大原淳也(ベイスターズ)
橋本将(マリーンズ~ベイスターズ~愛媛マンダリンパイレーツ)
末永真史(カープ)
大平成一(ファイターズ~信濃グランセローズ)
※ 青文字は左打者。
それでは今日のトライアウトの結果を順番に…
投手門倉(開始時の守備は捕手橋本、一塁大平、遊撃大原、左翼末永。他のポジションはファイターズのスタッフ。以下打ち終えた選手が守備についたりして適宜交代。)
渡辺正 三ゴロ
生山 三振
高森 三振
佐伯 四球
古木 三振
打者は打席に入るときに場内アナウンスで名前と旧所属が放送される。今季NPB十二球団のいずれかに所属していた選手は「渡辺正人。千葉ロッテマリーンズ」という感じで紹介されるが、今季無所属の佐伯貴弘や、昨年までに退団して独立リーグに所属している選手は「佐伯。元中日ドラゴンズ」というようにNPBで最後に所属した球団名で紹介される。佐伯は上の写真のようにドラゴンズのユニフォームで参加した。古木克明は「元オリックス・バファローズ」と紹介されるが、ユニフォームは最初に入団した横浜ベイスターズのものだった。高森勇気や大原淳也がDeNAベイスターズ仕様のユニフォームを着用しているので古木は特に目立った。門倉は規定の5人を投げ終えたので交代。一塁走者の佐伯はベンチに戻り、佐竹健太に代わって再び無死無走者の設定で再開。
大原淳 三ゴロ
橋本 三振
末永 三振
大平 左飛
渡辺正 三ゴロ失(三塁手はファイターズのスタッフ)投手交代 佐竹→石川
生山 二ゴロ
高森 二ゴロ
佐伯 四球
古木 遊ゴロ
大原淳 三ゴロ失(三塁手はファイターズのスタッフ)投手交代 石川→久米
橋本 中飛
末永 右前安
大平 四球
渡辺正 二ゴロ併殺打
生山 一直
渡辺正人の二塁ゴロは二塁手のほぼ正面に飛ぶ典型的な併殺打。二塁に入っていたのはファイターズから戦力外通告を受け、一回目のトライアウトには参加していた市川卓。現役時代には一塁が本職でたまに三塁を守っていたが、不慣れな二塁守備で無難なフィールディングを魅せた。市川の進路は不明だが、こうして手伝っているところを観ると球団に何らかの形で残るのだろうか?
投手交代 久米→高田
高森 三振
佐伯 中飛
古木 左飛
大原淳 三振橋本 中前安
他の投手が、降板するときには次の投手のためにマウンドを馴らすのに久米勇紀はさっさとマウンドを降りた。今季途中にホークスからジャイアンツに移籍し、数ヶ月で戦力外通告とは気の毒にも感じたがこういうのを観てしまうとちょっと残念。
大原淳也は三振の前に三塁線に痛烈なゴロの打球を放ったが一人しかいない審判の球審にファウルと判定された。微妙な判定だったがフェアだったら二塁打にはなるであろうあたりだった。投手交代 高田→吉岡
末永 四球大平 右中間二塁打
(走者二、三塁)
渡辺正 三振生山 右前適時安打
(三塁走者生還。なお走者一、三塁)
高森 (生山二盗)右犠飛
(三塁走者生還、二塁走者も三塁へ)
走者が二、三塁となってショートを守っていた大原淳は前進守備を敷き、それに合わせて二塁手、三塁手のファイターズのスタッフも前進守備をした。大原淳は守備でもアピールしようとしたのだろうが残念ながら打球が来なかった。また、そんななかできちんと犠飛を放った高森勇気にもスタンドのファンから暖かい拍手が起きた。
逆に2失点してしまったタイガースの育成選手、吉岡興志。見た目は同じタイガースの久保田智之をほうふつとさせるパワーピッチャーだが、いかんせん制球が無茶苦茶でストライクを取りに行く投球を痛打された感じだった。
投手交代 吉岡→斎藤
佐伯 右中間二塁打
古木 四球
大原淳 三振
橋本 中飛併(飛び出した二塁走者が帰塁出来ず)
末永 三振
大平 四球
佐伯の打球は記録上は“安打”と記録されるであろう打球だったが、ライトとセンターがともにファイターズのスタッフで目測を誤った感じだった。そして橋本の打球はセンター後方のフライで、抜けると思った二塁走者の佐伯と一塁走者の古木はすぐにスタートしたが、今度は一転してセンターが好捕した。
8-6-3と転送されてあわや三重殺という感じだったが、一塁への送球が乱れて古木は辛うじて帰塁出来た。
打者別成績
渡辺正 三ゴロ、三ゴロ失、二ゴロ併殺打、三振
生山 三振、二ゴロ、一直、右前適時安打(打点1)※盗塁1
高森 三振、二ゴロ、三振、右犠飛(打点1)
佐伯 四球、四球、中飛、右中間二塁打
古木 三振、遊ゴロ、左飛、四球
大原淳 三ゴロ、三ゴロ失、三振、三振
橋本 三振、中飛、中前安、中飛
末永 三振、右前安、四球、三振
大平 左飛、四球、右中間二塁打、四球
全体に打高投低で、一人で二安打した者はいなかった。気候的に寒かったせいもあるのだろうか。そして皮肉にもトライアウトが終わった頃から暖かくなってきた。例年、二回ある合同トライアウトで、二回目で球団が決まるケースはほとんど無い。そもそも一回目の56人の受験者の中で来季のNPBチームとの契約がまとまったのはライオンズから戦力外通告を受けた星野智樹だけのようだ。本来なら残りの55人全員がこの鎌ヶ谷でのトライアウトを受けてもおかしくはないのだが、それが前回受験していない門倉健と佐伯貴弘を加えて16人になったのは、まだ公表されていないだけで、どこかの球団と契約がまとまりそうな選手がいるのか、一回目のトライアウトで見切りを付けたのか…?
いつもは口うるさい野次が飛び交うファイターズスタジアムも、さすがに今日はうかつに野次れない空気が漂っていた。ただ投手が制球を乱すと、「ストライクが入らないと(打者が)テストにならねぇぞ…」程度の野次は飛んでいた。またファウルフライをファイターズのスタッフが追うと「捕らないで…」の声が何回か飛んでいたが、投手としては何が何でも捕って欲しいものだろう。ただ、手伝いで捕手を務めていたファイターズの大嶋匠がシーズン中でも観られた様に時折投球を弾いたりするとファンは容赦なく野次っていた。
特に生山裕人が二盗を試みた際には送球すら出来ず、「お前来年トライアウト受ける方に回るのか?」などときつい野次を浴びていた。大嶋と荒張裕司で橋本しかいない捕手をカバーしていたが、荒張には厳しかった。
敗戦処理。は三日前の18日には甲子園球場で阪神×巨人OB戦を生観戦してきた。出場したOBはいずれ劣らぬ功成り名を遂げた往年の名選手ばかりで、試合開始から終了まで本当に楽しい試合だった。一方、今日の16選手は門倉や佐伯など一時代を築いた選手も中にはいたが、一軍出場0の選手や、育成選手ドラフトで入団して支配下選手登録をされることなく育成選手のまま戦力外通告を受けた選手もいた。どちらも日本のプロ野球の現実だ。一野球ファンとして、それをかみしめておきたい。
今日の観戦は、やろうと思えば普段の試合の観戦時の様な“実況”をツイッターでやることも可能だった。だが、例えば“○○選手が□□選手からセンター前に安打!”とツイートすることが果たして情報としてどの程度の意義があるか疑問だ。これが普段の試合であれば、どんな内容の安打であろうと、打者が塁に出ることはチームにプラスになるし、得点の足がかりになるかもしれないからそれは一つの情報となるが、トライアウトは性質上、その打撃の結果、あるいは内容が編成担当者の目に止まらなければ、ほとんど意味が無いからである。○○選手が4打数2安打したとして、それをツイートで知った○○選手のファンは希望を持つかもしれないが、その内容が編成担当者の心を動かすものでなかったら、その2安打はほとんど意味が無く、ファンの人にぬか喜びさせてしまうことになり、それは罪作りなことになる。実際、佐伯が二塁打を放った事をツイートしている記者がいるが、外野を守っていたファイターズのスタッフが目測を誤った感じがあり、本職の現役外野手が守っていればおそらくはただの外野フライだったろう。そういうニュアンスまで伝えないと情報としては“正確”とはいえないし、そこまでやろうとしたら、すべての選手の打席結果を網羅できない。したがってここまでお付き合いいただいてこんなことを書くのもナンだが、上記の打撃結果はあくまで事実の羅列であって無味乾燥なものだと割り引いて考えていただいたほうが良いかもしれない。
失策で塁に出た選手に対し「ラッキー」と声をかけていたファンもいたが、たぶん編成担当者には評価されていないだろう。シート打撃は実戦に近い形式ではあるが、実戦ではない。
引き上げようとして、コンコースから正面広場を観たら黒山の人だかりだ。選手の出待ちをする人達が正面の関係者出入り口の前にあふれかえっているのだ。敗戦処理。も選手のサインを集めているが、個人的には今日は「サインを下さい」という気にはならなかった。
出待ち組の大半は佐伯目当てだったようだ。実際、打席での歓声は佐伯が一番大きかったと思う。高森には応援団が来ていて、その人達がチームメートの大原淳にも熱い声援を送っていた。こういう状況で熱い声援を送ってくれるファンのことは選手も感謝しているだろう。佐伯の場合は特にベイスターズ退団のいきさつがファンには残念な経緯だったので人気が高いのだろう。実際に佐伯が姿を現すと佐伯コールの大合唱になったそうだ。
ただ、シーズン中に幾度となく通ったファイターズスタジアムで、シーズン中とは明らかに異なる空気が漂った今日のこの約一時間強を味わえたことは一野球ファンとしていい経験になった。今日の16選手から一人でも多くの選手がどこかの球団で来年もプレー出来る様になって欲しいが、それが現実味が薄いことはわかっている。新しい選手が入ってくれば、誰か追い出されるのがこの世界。そうであれば、トライアウトを受ける事態になる前に、シーズン中にもっと試合に足を運び、特にファームの試合では半人前の選手に甘い言葉で囁くのでなく、信賞必罰でミスをしたときには叱咤するのもファンとして必要なのかなと思った。トライアウトを受けている時点で、プロ野球選手としてはほぼ負けなのである。厳しいがそれが現実なのだろう…。
P.S.
11月9日に行われた第1回トライアウトの結果はこちらがわかりやすいかと…。
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コメント
西 清治様、コメントをありがとうございます。
> 本当に参加人数が少なかったんですね。個人的には、社会人野球チームにいる門倉と、未だあきらめていない古木が特に気になりました。
門倉は未練を断ち切るために参加した…みたいなコメントを残していましたね。ちょっと違うんじゃないかと思いましたが、この日の結果でまだやれると手応えをつかんだとか…。
古木は打てなかったですね。
二年前の12月に見た、欽ちゃん球団と松坂大輔のチームとの対戦で見た古木はライトオーバーの豪快な本塁打を放ち、その立ち振る舞いを見てやっぱり野球選手なんだなと思いました。
( http://mop-upguy.cocolog-nifty.com/baseball/2010/12/post-9ddd.html )
しかしこの日は…
> おそらくこの模様は、またTBSで放送されるんでしょうね。
佐伯ですかね、絵になるという点で?
東山紀之の姿は見かけませんでしたが…。
投稿: 敗戦処理。 | 2012年11月25日 (日) 12時35分
敗戦処理。さん、お疲れさまでした。そして、ご報告ありがとうございました。
本当に参加人数が少なかったんですね。個人的には、社会人野球チームにいる門倉と、未だあきらめていない古木が特に気になりました。
おそらくこの模様は、またTBSで放送されるんでしょうね。
投稿: 西 清治 | 2012年11月25日 (日) 00時04分