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2012年12月 8日 (土)

嶋基宏新選手会長就任でプロアマ問題は動くか?

Adsc_02596日、労働組合日本プロ野球選手会の選手会長にゴールデンイーグルスの嶋基宏が就任した。東日本大震災直後の日程問題、来春のWBC参加問題などに奮闘したタイガースの新井貴浩前会長に代わる第8代会長だ。

嶋新会長は長年の難題と言える「プロアマ問題」-特に高野連との関係改善を最大のテーマとすることを表明した。


(写真:新井貴浩に代わって労働組合日本プロ野球選手会の会長に就任したゴールデンイーグルスの嶋基宏。20119月撮影。手前の後ろ姿)



プロアマ問題
まだドラフト制度がなかった約五十年前、当時、社会人野球協会
(今の日本野球連盟の前身)は産業対抗大会(今の社会人野球日本選手権)終了まではプロ側に選手への接触をしないよう求めていた。またプロ側は退団選手の受け入れ先を求めて、社会人側に退団の翌年の都市対抗野球終了後からプレー出来るよう申し入れていたが、これが認められなかったため、社会人野球協会との協定を破棄。こうしてルールが曖昧だった1961年、420日にドラゴンズが日本生命の柳川福三外野手を獲得したと発表。社会人野球協会は緊急理事会を開いてプロ野球界との関係断絶を決意。プロ退団者の受け入れ拒否を鮮明にした。ドラゴンズはさらに夏の全国高等学校野球選手権大会一回戦敗退直後の大分県立高田高校の門岡信行投手に接触したことが発覚。敗退直後で退部届を出す前だったことを重く観た高校野球と大学野球を統括する日本学生野球協会が社会人野球大会の決定に同調。学生野球憲章でプロ関係者の指導を禁止した。
(プロアマ問題に関しては“柳川事件 ”で検索するか“「柳川事件」とプロ・アマ関係” を参照されたい。)


長い歳月を経て、社会人、大学球界との関係はだいぶ修復してきたが、高野連は頑なな姿勢を崩さない。プロ退団者は教員資格を取り、教諭や臨時講師として二年間以上の在職を果たして初めて高校で指導を行える様になる。直近では新井貴浩前会長と井端弘和1112日に行われた「学生野球資格回復に関する協議会」に現役プロ選手として初めて出席してプロアマの壁の早期撤廃を訴えたが、高野連が難色を示しておりアマ側からの明確な回答はない。

嶋会長が最大のテーマに掲げた相手は難攻不落の“高野連”だ。

中畑清が選手会長を務めていた時に労働組合として認可されてから、これまで選手会が戦ってきた相手は日本野球機構が主。FA制、球界再編騒動、東日本大震災直後の日程問題、WBCへの参加問題こそWBCIとの条件闘争という趣があったものの、実際に利益配分が勘案されたのは過去二回の大会に続いて国内開催部分を仕切る読売新聞社との交渉であったことを考えると、結局は日本野球機構との戦いだったと言えよう。

しかし今度の戦う相手、“高野連”は明らかに違う。

今さら少なくないファンが違和感を覚えていると思うが、高校野球連盟はいまだに高校野球に「清く正しく美しく」を求めている。高い技術を持つ元プロ、あるいは現役プロの指導を受けることが高校球児にとってプラスになることがわかっていてもそれを頑なに拒み続けるのはそれにより特定球団の色が付くことを嫌がるのだろう。もちろん、問題視された特待生問題など、高校球界にもツッコミどころは満載だが…。

明治大学の一場靖弘への栄養費問題、ライオンズ球団で露呈した長年にわたる裏金問題、ジャイアンツの高額契約金騒動…「清く正しく美しく」の対極にある“金”に絡む問題に選手を晒したくないというのが高校野球連盟側の立場なのだろう。朝日新聞、毎日新聞という巨大マスメディアをも絡めたこのイメージ戦略はプロ側の誰が取り組んでも高い壁になることだろう。

例えば、昨年のドラフト会議で問題になった菅野智之のような例は特殊だとしても、その一年前のドラフトの有力候補の一人だった中央大学の澤村拓一の動向に、澤村の監督がジャイアンツOBの高橋善正だったことが無関係とは言えまい。こういう話がどんどん表面化するのを高校野球連盟側は嫌うのだろう。明日9日に記者会見を開くというファイターズのドラフト1位指名、花巻東の大谷翔平に対しても、態度の豹変に事前の密約説を疑う向きがあるほどだ。“本当に大リーグ入りしか考えていないなら、同じファイターズに1位指名された昨年の菅野の様に面会すら拒絶するのが普通でそれをしないのは事前に密約があり、その指摘を避けるために徐々に軟化している様に見せているだけだ。”だの“日ハムだって二年続けてみすみすドラフト1位を逃すほどバカじゃない。去年で懲りているのに指名したのは裏付けがあるからだ。”等の声もある。

ファンはドラフト会議に様々なドラマ性を求めるが高校野球連盟としてはせいぜいくじ引き特有のドラマ性以外は認めたくないのだろう。球児達のモチベーションの一つにプロ入りがあるのは明白だから存在を否定はしないが、ダークな部分を引っ張ってきて欲しくないのだろう。

敢えて
プロVSアマという構図で捉えた時、プロ側はアマを選手の供給源と見なす一方で、退団者の受け皿にしたいという思惑があろう。後者がアマ側の利害と一致するにはプロを経験した者こそが持ち得るモノをアマ球界に還元することが条件になるだろう。社会人野球の場合はプロ退団者が再び選手となって所属するケースもあり得るが、高校球界の場合、元プロの受け皿は指導者くらいだ。元プロのセカンドキャリアの拡充のために、敢えて誤解を招く言い方をすれば“野球しか能がない”元選手の受け皿は野球関連の仕事が一番手っ取り早いのだ。高校球界の風穴を開ければ、途方に迷う元プロ選手が一気に減りそうだ。

だが高校野球連盟側の考えはそうではない。彼らが純粋にプロを経験した者こそが持ち得るモノを還元してくれるだけならともかく、背後に元所属球団の意向が働くケースがあるとしたら…疑い始めたらきりがないが疑いたくもなろう。ましてや「清く正しく美しく」あろうとしている世界だ。

本来であれば、サッカーなどの様に指導者ライセンス制度があれば、純粋にプロを経験した者こそが持ち得るモノを高校球児に還元するシステムに高校野球連盟側も胸襟を開くかもしれない。選手会もプロ側のみの基準ではなく、アマ(高校、大学、社会人)との共同作業にてライセンス制度の基準を設けるためのプロアマ合同の組織を作るところからスタートすべきだと思う。今はそれに変わるものが教員資格なのだろうが、あくまで野球の伝道師としての一定の基準でふるいにかけられた元プロだけが高校球児に指導を出来る様にすれば高校野球連盟側の不振、不安も相当程度ぬぐい去れるのではないか。

この場合、元プロの中でもこのライセンスを取得出来る者は限られた者になるだろう。そうでなければ意味はない。そうすると嶋会長が高野連を動かそうとしている狙いにセカンド・キャリアの受け皿を拡充するということを含んでいるとしたらライセンス制度は諸刃の剣となる(だからそこまで踏み込まないのかもしれないが…)。

皮肉な話だ。彼らがもし“野球しか能がない”から野球に関連した仕事の受け皿の拡充を狙っているとしたら、“野球しか能がない”道に進んでいった原因の一端は高校野球界にもあるだろうに…。

前述した様に、これまで選手会は日本野球機構を相手にいろいろな条件闘争などを繰り広げてきた。その中には相手となる機構側に読売グループの意向が見え隠れするケースが散見された。わかりやすくいえば球界再編騒動の時には一リーグ化、縮小均衡の道を進もうとし、東日本大震災直後であるにもかかわらず予定通りの日程を強行しようとしたあの動きだ。そういう意味では球界全体として“脱読売”を考えることも一つのテーマであって然るべきなのだが、選手会が高野連を戦いの相手とするということはその背景に朝日新聞と毎日新聞…読売新聞のコンペティターがいることを考えると…。

嶋会長が本気で“高野連”を動かそうとするなら、日本野球機構も動かさなければならないのはいうまでもない。

嶋会長はパ・リーグの球団に所属する初の選手会長としても注目されている。また、入団が2007年なので球界再編騒動、その集大成としてのストライキを経験していない。どんな手腕を発揮するか非常に興味深い。

昨年の東日本大震災の後の「見せましょう、野球の底力を」というあのスピーチに野球ファンのみならず多くの国民が感銘を受けて嶋の株が急上昇した時期に、敢えて“野球選手(捕手)としての能力とは直接関係なし”と言い放って敗戦処理。は物議を醸したが、今もその考え方は変わらない。東日本大震災から半年経った昨年の9月に日本製紙クリネックススタジアム宮城で観戦していたら、チャンスに凡退した嶋に地元ファンから「そろそろ底力見せろよ」と野次が飛んでいた。ただ、選手会長としてどんな手腕を発揮するかという目で嶋を観るとなると、あのスピーチはポジティブ要素になる。

敢えて難攻不落のテーマに挑む嶋会長に注目してみよう。

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コメント

肉うどん様、コメントをありがとうございます。

基本的にご指摘の通りだと思います。

> 高校野球も勝負の世界には変わりありませんので、利権の温床となるライセンス制などなしで、プロ⇔アマの流動性が高くても何の不自由もないような気がします。

利権の温床になるという点は見落としていましたね。高校生に限らず、少年野球にしろ、単なる経験談でなく、一定の理論に基づいた指導が必要と言う意味で指導者ライセンスが有用だと思ったのですが…。

> 当然のことですが、高校の監督に清く正しい方が多いなんて聞いたことありません(でも、逆は良く耳にします(苦笑))。

そこがポイントだと思うのですよ。誰しもが気がついているのに、誰も突っ込めない。どっちもどっちの世界なのに、片方は「清く正しく美しく」…<笑>。

“まあ、元プロ野球選手○○が…で逮捕”などというニュースに接する度に、野球しか取り柄のない人の末路の寂しさを感じますが、嶋新会長の提案が自分たちのセカンドキャリアの拡大化のためでなく、あくまで野球界の裾野を広げるための提案であってほしいです。

投稿: 敗戦処理。 | 2012年12月11日 (火) 23時29分

敗戦処理。さん、いつもありがとうございます。

プロを辞めてから大学を出て高校野球の監督になった阿井氏がプロのコーチになりましたが、簡単には高校野球に戻れないようですね。個人的には、高校野球も勝負の世界には変わりありませんので、利権の温床となるライセンス制などなしで、プロ⇔アマの流動性が高くても何の不自由もないような気がします。当然のことですが、高校の監督に清く正しい方が多いなんて聞いたことありません(でも、逆は良く耳にします(苦笑))。

ご指摘の通り、プロ球団側だけでなく、高野連側も突っ込みどころ満載ですし、この議論が良い意味で野球界の活性化につながればと思います。

投稿: 肉うどん | 2012年12月11日 (火) 13時44分

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