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2013年2月 3日 (日)

桜宮高校自殺問題に続く柔道女子日本代表監督暴行告発で野球界のプロアマ雪解けの旗色が変わるか!?

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先月
17日に行われた日本高校野球連盟の「学生野球資格に関する協議会」で、これまで二年以上の中学、高校での教諭歴が必要だった元プロ野球選手の学生野球指導者資格を見直し、球団の推薦が必要なものの数回の講習を受けることで資格を取れるという大幅に譲歩した条件緩和案を日本野球機構に示した。

スポーツ新聞などは元人気プロ野球選手の名前を挙げ、彼らが高校野球の監督に就任する日が近いかのように書き立てた。

だが、その後に発生した大阪市の桜宮高校における、部活動中の教師からの体罰を苦にして翌日に自殺した生徒の事件や、柔道の女子日本代表選手達による監督の体罰、暴力の告発で学校スポーツ、アマチュアスポーツにおける“指導”の難しさがクローズアップされてきた。

その分野で功成り名を遂げた選手なら誰でも良き指導者になれる訳ではないことはマスコミや多くのファンが気付いていたはずだが、長年門戸を閉ざしていた高野連のまさかの急激な豹変に諸手を上げて喜んでいたところに冷や水をぶっかけられた感じがする。

あらためて、元プロ野球選手の高校球児への指導について考えてみる。


今までの閉塞感は何だったと言わんばかりの急激な豹変ぶりに翌
18日の各スポーツ紙は大々的に報じた。
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サンケイスポーツは松井秀喜が率いる星稜学園と桑田真澄が率いるPL学園との対決が見られるかもと大はしゃぎ。松井も桑田も高校野球の指導者になる夢を語ったことがあるからだが、はしゃぎっぷりは他紙もおおむね似たような感じ。


プロを目指す高校球児にとっては、プロ経験に基づく、今までよりレベルの高い指導を受けられる可能性が出てきたことになり、元プロ野球選手にとっては、これまでの野球経験を活かせるセカンドキャリアの選択肢が拡がったことになる。

柳川事件 から半世紀以上が経ち、プロアマ問題は社会人野球や大学野球との間では大筋において解消されてきたが、高校野球界との雪解けはしばらく大きな変化がなかっただけに本来諸手を上げて喜ぶべきなのだろう。だが野球以外の種目とは言え、上に挙げたような指導者の指導力を問われる事例が相次ぐと、門戸開放はともかく、短期間の座学講習程度で資格を与えて大丈夫なのかと不安になってくる。

もちろん元プロ野球選手が資格を得たところで、直ちに高校野球の指導者になれるとは限らない。今の時点では需要が増えたとは言い切れないからだ。

もちろん、高校野球の現場にも体罰をいとわぬ旧態依然とした指導法が完全に消滅したのかは敗戦処理。にはわからない。あっても不思議ではないと思う。学校側が現状の監督を解任して元プロ野球選手を監督に迎え、論理的な指導を受けさせたいと考えるケースも出てこよう。

そうした高校球界側のニーズを満たした人材でないと、単に元プロ野球選手という経験則だけのOBではノー・サンキューだろう。

マスコミ辞令で名前の挙がる桑田や松井、さらには立浪和義などにどのくらい指導力があるか不明だが、プロ野球側から監督やコーチとして招聘されたらすぐに高校野球を放り出すような指導者はお断りだろう。高校野球では生徒は三年間で入れ替わるが、一度にそっくり入れ替わることはないだろうから、学校として継続的な指導が求められるだろう。

現状でも日本の独立リーグで監督、コーチを務めている元プロ野球選手(NPB出身)がNPBの球団から指導者に招かれてすぐに復帰するケースはよく見られる。

また、今季からマリーンズの監督に就任した伊東勤監督は昨年まで韓国プロ野球の斗山のコーチを務めていた。契約はもう一年残っていたが、日本球界に復帰する場合に限り伊東側から解除を希望できる契約だったそうだ。これらのケースとは異なるだろうが、長期にわたり、一つの高校を指導する意思の強い人材でなければ、学校側も容易にはこえをかけられないと思う。

そしてそうであるならば、腰を据えた高校野球の指導者になるために短期間の座学講習程度で資格を与えて良いのかという疑問が出てくるのだ。

既に人材交流が再開している大学球界での元プロ野球選手の監督は、東京国際大学の監督に就任した元カープ他の古葉竹識監督を始め、キャリア的にはプロ野球界を卒業したイメージのOBが多く、腰掛けという感じはしない。
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もっとも、大学野球の監督を務める元プロ野球選手のなかには中央大学を率いる高橋善正の様に教え子の澤村拓一のドラフト指名に際し、古巣のジャイアンツの囲い込みに協力した疑惑が囁かれた。高野連はこういう意図で元プロ野球選手の監督が“利用”されるケースにも目を光らせなければなるまい。


要は高校野球の指導者になるということを目的にする人物ならまだしも、手段と考える人を受け入れてしまったら要注意だと思うのだが…。

さて、桜宮高校や柔道界で表面化した“体罰”の問題。野球界の現場ではどうなのか?

一貫して“体罰”を否定している桑田真澄2日、大阪市内で非公開で行われた教員研修会で講演した。
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(写真:トークショーで熱弁をふるう桑田真澄。
200810月撮影)桑田の体罰否定は今に始まったものでは無い。2010年に発生した、当時ライオンズのコーチだった大久保博元による暴行問題の際に、桑田はレギュラー出演しているTBS系のスポーツニュース番組「S・1」において体罰問題を扱った。当時の現役プロ野球選手300人にアンケートを採った結果、約83%が体罰を必要と答えた。

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プロ野球選手300人に聞いた「体罰をどう考えるか?


必要である 13

時には必要である 70

できればなくすべきである 12

絶対なくすべきである 4%
わからない 1%

桑田真澄の論文より


(詳しくは拙blog2010725日付ライオンズ大久保博元コーチの不適切な行為とスポーツ指導における愛のムチこと体罰を参照されたい。)

個人的には桑田より、同僚だった清原和博や“体罰”には一家言もっていそうな星野仙一監督の意見を聞きたいものだが…<笑>。
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今同じアンケートをしたら結果は異なるだろうが、同じプロ野球界の出来事が騒がれているときにこのような結果が出ているということは体罰を“時には必要である”と考える世代の元プロ野球選手が高校生を指導する現場になだれ込んでくる可能性があるということだ。

繰り返しになるが、球団の推薦と短期間の座学講習程度で良いのか?

私見だが、今後実施されるであろう講習制度の程度では短期間の“臨時コーチ”などの資格にとどめ、一定期間継続する高校野球の監督、コーチになるには教員資格の必要性を排除するにしても、それに近いハイレベルの資格検査を課した方が良いと思っている。

誤解を恐れずにいえば、高校球児を指導するための資格取得にチャレンジする元プロ野球選手にはNPBのプロ野球チームから指導者としての声がかからない選手が多いだろう。プロ野球界でコーチになるには指導者としての資質以外に人脈などの要素が左右することも大きいという声もあるが、駆け込み寺のように資格取得にチャレンジされるケースも出てくるだろう。

雪解けは大いに結構だが、いきなり敷居が低くなりすぎではないか?高校球界にとっても、プロ野球界にとっても双方にメリットのあるプロアマ交流が実現するには、今回の条件緩和案は大きな分岐点ではあろうが、まだまだ課題が多いと思う。

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