アレックス・ラミレスが外国人選手として初の2000本安打達成…で対応が問われるのは…
確かに、アレックス・ラミレスが昨年大リーグ時代を含めた米日通算2000本安打に目前と迫っていた時点では拙blog2012年7月3日付アレックス・ラミレス、米日通算2000本安打達成まであと4本! でも言及したとおり、日本プロ野球名球会の公式HP内の“入会予定者”という項目にラミレスの名が無かった。ラミレスより残り安打数の多い谷繁元信らや、既にNPB球団に所属していない大村直之の名が列記されているにもかかわらずだ(現在はHPから削除されている)。これは外国人選手が日本球界で通算2000本安打を達成しても名球会としては仲間に入れないという意味ではと勘ぐるに充分な表示だった。ところが現在は日本プロ野球名球会のHPのトップページで「アレックス・ラミレス選手 2000本安打達成!!」 と祝福しているくらいだから(“名球会入り”的なメッセージこそ見当たりませんが)早晩例のブレザーを贈呈する儀式が行われるのかなと敗戦処理。は楽観視している。
ただしもちろん敗戦処理。は名球会を公益性はあるかもしれないが、単なる私的団体=サークルとみなしているので、別に名球会がラミレスを会員に認めようが認めまいが、どういう基準を設けようが、そのこと自体にはさほど興味がない。その理由についてはこの種の話題の度に拙blogで触れているが、お時間のある方は2007年5月7日付カネやん in N.Y. 「名球会」って何?を参照されたい。
むしろその意味では、外国人選手の実績に門戸を開いて欲しいのは、近年選考の時期にこそ問題になるが、ブーマー・ウエルズやランディ・バースがなかなか殿堂入りを果たせない野球殿堂の方だ。
もちろん現役選手のラミレスを直ちに入れろなどというつもりはない。以前より選出システムに変化が見られたものの相変わらず年功序列的に順番に殿堂入りが決まっていく印象が強い中で日本選手に比べればどうしても実働期間が短いものの、それを補って余りある活躍をしたブーマーやバースがなかなか殿堂入りを果たせない事に関して何も問題意識を持っていないと思われるのが残念である。
日本人のプロ野球選手がFA移籍、あるいはポスティングシステムを利用することによって、そのキャリアのピークが過ぎる前に日本球界を離れるケースは今後ますます増加するだろう。ということは日米を股にかけて活躍した選手はその双方での成績を評価しなければならないと思うし、逆に外国から来て日本プロ野球で活躍する選手も平等に評価すべきであろう(その点だけに絞って考えれば、野球界の表彰ではないが松井秀喜が国民栄誉賞を受賞するということを日本球界関係者はよく考えて欲しい)。話が飛躍しているきらいはあるが、この機会にぜひ!
ところでラミレスはスワローズ、ジャイアンツ、ベイスターズと三球団目の所属で通算2000本安打を達成した。スワローズからジャイアンツへの移籍は契約更新時に折り合いが付かないところにジャイアンツがより好条件を提示して、自由契約となったラミレスを獲得した形だったが、ジャイアンツからベイスターズへの移籍はジャイアンツから戦力外通告を受けてのものだった。
2007年にスワローズで204安打を放って最多安打のタイトルを獲得すると共に122打点で二度目の打点王を獲得していたラミレスは、ジャイアンツ移籍一年目の2008年に前年を上回る125打点を挙げ、打点王となった。
小笠原道大と組む三、四番は「オガラミ」と呼ばれ、ともに確実性と長打力を備え持った中軸としてセ・リーグ他球団を恐れさせ、ジャイアンツのリーグ優勝に大きく貢献した。セ・リーグの最優秀選手にも選ばれた。翌2009年も「オガラミ」は猛威を振るい、ラミレスは186安打で最多安打を記録するとともに打率.322で初の首位打者にも輝き、リーグ優勝に大きく貢献して二年連続でセ・リーグの最優秀選手に選ばれた。さらに2010年にはチーム成績こそ3位に終わったが、ラミレスは49本塁打、129打点で本塁打と打点の二冠王に輝いた。そしてこの三年間、一試合も休まず出場。移籍初年度の開幕当初こそ五番打者だったがすぐに巨人軍第74代四番打者となると、5月4日のスワローズ戦からは四番に座り続け、2010年のシーズン終了時点で402試合連続四番打者を務めていた。
ところが2011年になって、統一球導入の影響か、年齢的な影響かラミレスの打撃が低迷した。137試合に出場して23本塁打、73打点、打率.279とラミレスにしては低調な成績に終わるとシーズン後には戦力外とされた。
ラミレスの高打率と長打力と翳りが見えてくると、元よりネックであったレフトの守備力の低下もクローズアップされる。守備面でのハンディを打撃で埋めてきたが、それがままならぬとなると原辰徳監督はラミレスに守備固めを送るイニングが早くなる。そして試合の中盤に退く選手を四番には置けぬと四番以外でのスタメンが増えていった。二冠王と打棒爆発した2010年に比べると、出場試合数は144→137と7試合の微減にかかわらず、打席数が606→515と91打席も激減している。ラミレスの守備力に目をつぶってレフトを守らせるほどの打力ではなくなったと原監督が判断したのだろう。
この仮説が外れていないとすると、ラミレスは2000本安打達成に関してはベイスターズへの移籍は正解だったと思う。失礼ながらジャイアンツほど先行逃げ切りのスタイルに徹していないチームでプレーした方が安打数を稼ぐにはうってつけだ。なおかつ親会社が代わり、中畑清新監督とともにその明るいキャラクターが求められたという事情もあったろう。
ラミレスはベイスターズと二年契約を結んだ。昨年2012年はジャイアンツでの2011年と同じ137試合の出場で打席数は515→504、打数が477→476とほぼ遜色なかった<笑>。まだまだ統一球対策に苦しむ選手が多い中、本塁打こそ23→19とさらに減ったものの安打数を133→143と復活させ、打率も.300とリーグ5位の成績を残した。守備力のさらなる低下は否めないが、まだまだラミレスのバットはベイスターズ打線には必要不可欠だ。
ところでラミレスは強打者の割に四球が少なく、今日の日刊スポーツによると2000本安打到達時点での通算303四球は歴代2000本安打達成者の2000本安打到達時点では最少だそうだ。
敗戦処理。も昨年、あることを調べていて同じ2001年入団のアレックス・カブレラと比較してラミレスの四球の少なさに驚いた。カブレラは昨シーズン限りで現役を引退したが、ラミレスとカブレラの2001年から2012年までの打撃成績を比較しよう。
ラミレス
1688試合7013打席6578打数1993安打378本塁打1258打点。300四球75死球1239三振、打率.303
カブレラ
1239試合5257打席4510打数1368安打357本塁打949打点。667四球57死球1143三振、打率.303
特にホークス移籍後に出場機会が激減したカブレラは各項目においてラミレスより数値が少ないのが目立つが、四球の数がラミレスの二倍以上である。カブレラのライオンズ時代には後ろに和田一浩がいる時期が長かった印象がある。そもそもカブレラの方が多少ボール球でも強引に打ちに行くイメージがあるが…。
昨日6日付エントリー内川聖一、もうすぐ通算打率の規定打数4000に到達-歴代打率5位にランクイン!? で、日本野球機構が年一回出している「OFFICIAL BASEBALL GUIDE」の通算打率の項目に、外国人選手のレロン・リーが通算打数の規定打数4000に達した年次から5000打数以上という項目が設けられたと書いたが、ラミレスは5000打数以上のランキングで20位以内に唯一外国人選手で入っている(大下弘と谷沢健一の間に挟まれて10位)。ここでも外国人選手の扱いが…。
ラミレスほど、レフトの守備位置でイニングが始まる直前までファンとコミュニケーションを取ろうとする選手を見たことがない。ホームグラウンドではレフトスタンドには相手のファンが陣取るが、相手ファンにも気さくにボールを投げ入れたりとにかく可能な限りファンサービスに徹している。既にFA権を取得済みで選手登録上も日本人選手扱いで外国人枠から外れている。ラミレスを「外国人選手」とくくる必要性はもはやない。そんな素晴らしいラミレスが金字塔を達成したのを機に、名球会がどうのでなく日本のプロ野球に携わる関係者一人一人が「外国人選手だから…」との固定概念を見直す機会にして欲しい。いささか飛躍しすぎかもしれないが、いい機会と思うので書いた。
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コメント
チェンジアップ様、いつもコメントをありがとうございます。
> こんばんは。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130809-00000012-spnannex-base&__from=mixi
ソリアーノが入会したいと言ってます。イチローも擁護しとります。
入れてあげればいいと思う。
入会資格を満たしているのですから、入会させるべきです。何かの記事で(名球会側が)「これから検討する」と声明したとありましたが、言語道断です。
今季終了後に検討すべき議題は、“アメリカで打った安打数は含まないで…”とか言っている中村紀洋の資格取得日をいつにするかでしょう<笑>。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年8月10日 (土) 18時56分
こんばんは。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130809-00000012-spnannex-base&__from=mixi
ソリアーノが入会したいと言ってます。イチローも擁護しとります。
入れてあげればいいと思う。
名球会自体要らんという私の持論は置いといて。
投稿: チェンジアップ | 2013年8月 9日 (金) 21時24分
チェンジアップ様、コメントをありがとうございます。
> それはそれとして、本題。元・広島ソリアーノ(現・カブス)どうするの?というのを先程、ネットの別のソレで、読みまして。
広島で2本ヒット打って、あっちいって、1986本で、広島の2本足すと、1988本。
で、どうするんでしょうかね?という話。
私も何かの記事で読んで、気になっていますが、ソリアーノも望んでいないでしょうし、しょせん私的サークルですから、都合のいいようにするでしょう。
ラミレスだって達成が近づくまでは無視されていたのですから。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年7月16日 (火) 22時16分
こんばんは。
>は名球会を公益性はあるかもしれないが、単なる私的団体=サークルとみなしているので、別に名球会がラミレスを会員に認めようが認めまいが、どういう基準を設けようが、そのこと自体にはさほど興味がない
私も否定的な見てますし、それは以前にココに書きましたね。
それはそれとして、本題。元・広島ソリアーノ(現・カブス)どうするの?というのを先程、ネットの別のソレで、読みまして。
広島で2本ヒット打って、あっちいって、1986本で、広島の2本足すと、1988本。
で、どうするんでしょうかね?という話。
日本を起点ですから、彼の広島での2本はカウントしないといけないですよね。
ちょっと楽しみであります。
投稿: チャンジアップ | 2013年7月16日 (火) 20時59分
チェンジアップ様、コメントをありがとうございます。
> さっき、ウィキを読んだら。規定にこんなのがありました。
> >通算成績には、メジャーリーグでの成績も合算される。ただし、日本プロ野球での記録をスタート地点とする。なお韓国プロ野球や台湾プロ野球など、NPB・MLB以外での記録は含まない。
これは大リーグで1990本打ってから日本のプロ野球に所属して日本で10本打つような選手を除外するという趣旨でしょう。大リーグだけで2000本以上打って日本に来る人もいますし。
> なので、ラミレスとか駄目ということになりますね。だから、以前、私が田沢を挙げたけど、彼もダメなんでしょう。
ダメというか、日本で200勝すればいいのです。ラミレスは日本だけで2000本に達したから名球会の会員になれたわけで。
ただ中村紀洋は、大リーグでの5安打は計算に入れないで欲しいと言ってました。天下の名球会に自分だけ特例にしろと言っているようなものです<笑>。
> まあでも、日米通算なんてのは、日本のマスコミが勝手に作ったもの。という落合さんの指摘は正しいと思います。
私流に解釈すれば、例えば王貞治の本塁打記録や福本豊の盗塁記録、衣笠祥雄の連続試合出場記録などを数字の上で大リーグの記録と比較するのならば、日本のプロ野球の記録と大リーグの記録を数字の上では同格に扱うと言うことですから、個人で両方に所属した選手に関しては合計の数でカウントしないと矛盾すると言うことだと思います。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年5月22日 (水) 00時24分
こんばんは。
さっき、ウィキを読んだら。規定にこんなのがありました。
>通算成績には、メジャーリーグでの成績も合算される。ただし、日本プロ野球での記録をスタート地点とする。なお韓国プロ野球や台湾プロ野球など、NPB・MLB以外での記録は含まない。
なので、ラミレスとか駄目ということになりますね。だから、以前、私が田沢を挙げたけど、彼もダメなんでしょう。
まあでも、日米通算なんてのは、日本のマスコミが勝手に作ったもの。という落合さんの指摘は正しいと思います。
投稿: チェンジアップ | 2013年5月21日 (火) 20時30分
名無し様、コメントをありがとうございます。
> 名球会の多くは王さんのように外国籍(王さんは台湾籍でC.C.WANGさん)か、韓国・北朝鮮系の在日の方が多い。
何が外国人選手なのか、よ~く考えてみよう!
日本野球機構の定める基準で“外国人選手”と表記して言及しています。恣意的に書いているものではありません。
本エントリーと直接関係のない言及だとも思えますが、次回コメントをいただける場合はハンドルネームでも構いませんからお名前をご記入いただければ幸いです。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年4月 9日 (火) 00時32分
名球会の多くは王さんのように外国籍(王さんは台湾籍でC.C.WANGさん)か、韓国・北朝鮮系の在日の方が多い。
何が外国人選手なのか、よ~く考えてみよう!
投稿: | 2013年4月 8日 (月) 13時16分