吉川光夫が両リーグトップの13敗目。でも「倍返し」してくれると信じている
昨年のパ・リーグMVP、吉川光夫が苦しんでいる。敗戦処理。が生観戦した14日のホークス戦では粘り強い投球を見せながらも、五回裏に逆転されて敗戦投手。両リーグを通じてトップの13敗目を喫してしまった。
勝ち数ではファイターズでは9勝の木佐貫洋、8勝の武田勝、ブライアン・ウルフに先を行かれて7勝にとどまっているが、規定投球回数に達しているのはチームではその木佐貫と吉川だけ。頑張ってはいるのだが、昨年の印象が強すぎるのと、吉川の勝敗のマイナスがチームの借金とほぼ一致している点が今季のチームの苦しさの象徴のように思える。
でも敗戦処理。は信じている。吉川光夫が「倍返し」してくれる日を…。
(写真:序盤で制球に苦しみながらも力投する吉川光夫)
昨年の日本シリーズ終了後に左肘の故障が発覚した時点から、今季は吉川光夫を計算に入れてはいけない、投げられたとしても昨年のような大車輪の活躍を期待してはいけない、と覚悟をしていたが、何とか開幕に間に合わせてくれた。そうなると、ファンも期待のハードルを上げがちである。
それでも、栗山英樹監督が早々と開幕投手に武田勝を指名するなど、吉川の復帰に慎重だったのはうかがえた。だが、開幕してみると、ここまでファイターズで規定投球回数に達しているのは吉川と、チームの勝ち頭、木佐貫洋だけである。
拙blogを読んでくださる方々には今さら釈迦に説法だろうが、規定投球回数到達は先発ローテーション投手には年間のノルマであり、防御率のタイトルはまずこの規定投球回数に達していることが前提である。規定投球回数はチームの試合数とイコールだ。
昨今の先発ローテーション投手のように、中六日で登板し、なおかつ試合ごとに投球数を交代機の一つの目安にされると、ただ漠然と先発ローテーションで投げているだけでは規定投球回数に達しない投手が出てくる。
例えば、週に六試合あると、週に一回先発して六回未満で降板すると、規定投球回数を稼げないのだ。もちろん週に五試合の週もあるが、先発ローテーション投手は6イニングを上回るイニングを投げて初めて貯金が出来る。三回か四回でKOされたら、次は完投しないと平均で6イニングにならない…。中五日で投げて登板のサイクルを短くするか、先発したら最後簡単にはマウンドを降りない投手こそが規定投球回数に達するのである。ファイターズでは武田勝やブライアン・ウルフが先発ローテーションで投げていながら規定投球回数に達しないのは故障で離脱したりとか、登板時にイニング数を稼げないからだろう。
またDH制の無いセ・リーグでは打席で代打を出されてしまうケースもあり、より難しいと思われるが9月14日現在で比較すると規定投球回数に達している投手はセが17人、パが13人とセの方が多い。
今年の吉川は、故障の影響もあって中六日の先発ペースは確実に守られている。もちろん吉川一人だけが確保されているのでなく、ローテーションは均等に回ってくる。“二刀流”の大谷翔平のみが不規則な登板間隔になっているが、大谷が先発しない週には例えば谷元圭介が先発したり等、緩やかなローテーション編成をキープしている。それでいながら吉川が規定投球回数に達しているのは立派の一言に尽きる。今日の6イニングを足すと、今季は140イニング。次回4イニング以上投げれば年間の規定投球回数に達する。
今日で13敗となった吉川は序盤に失点を重ねてチームの試合運びを難しくするケースが目立つが、DH制で代打を送る必要がないため、立ち直りを期待されて続投するケースが多い。ビハインドの状況でも吉川が続投するのは立ち直りを期待されるのと、ビハインドの試合でつぎ込むリリーフ投手が限られているので、吉川にイニング数を稼がせたい台所事情もあるだろう。そうした積み重ねが、7勝13敗の投手がもうすぐ年間の規定投球回数に達する状態を作っているのだろう。
今日の吉川は序盤からストライクとボールが高低に関して三塁側内野席で観ていても比較的わかりやすかった。初回から左打者相手に四球を連発して二死満塁のピンチを招くなど、安定感に欠けていた。それでも、回を追うごとに際どいコースにストライクが決まりだし、それ故にハーフスイングでストライクを取れるケースが増えてきた。
この日は味方のファイターズ打線も、初対戦となるホークスの中途採用の新外国人投手、ポール・オセゲラに手こずっていた。
左対左となる西川遥輝がまるっきりタイミングが合わないのは仕方ないにしろ、大引啓次や陽岱鋼も自分のバッティングをさせてもらえなかった。
だが四回表にその陽が先頭でストレートの四球を選ぶと、すぐに二盗を決め、タイミングを狂わされたミケル・アブレイユの二塁ゴロが進塁打となって一死三塁のチャンスを作ると、小谷野栄一のヒットせいのセンターライナーが犠飛となって先制点を挙げた。
吉川もギアが入ってきた感じだったが、五回裏、先頭の松田宣浩に三遊間を破られると、続く江川智晃にフルカウントから四球。この試合4個目の四球だったが、初めて塁に出した先頭打者に続けて四球。無死で走者を貯めてしまった。山崎勝己は定石通りに送りバントを決め、一死二、三塁。ここで左対左とはいえ、今月4日の東京ドームでのこのカードで6時間試合の決着をつける本塁打を放った中村晃。
イヤな予感がしたが、右中間を豪快に破られ、二者生還で1対2と逆転された。
このカードを今季、東京ドームで5試合観ているが、特に今月3日から5日までの三連戦では3時間23分、6時間01分、4時間01分と合計13時間25分、平均でも4時間30分弱だったことを考えると、この逆転劇も後半の激しい点の取り合いの序曲に過ぎないかと思ったが、試合は結局この2点が決勝点となり、1対2のまま終わった。
【14日・福岡ヤフオクドーム】
F 000 100 000 =1
H 000 020 00× =2
F)●吉川、矢貫、石井-鶴岡、大野
H)○オセゲラ、藤岡、森福、S五十嵐-山崎
本塁打)両軍とも無し
15時49分には試合が終わってしまった<苦笑>。
上述したように吉川はこれで13敗目だが、相対的に考えれば3安打しか打てず、1点しか奪えなかった打線に敗戦の原因がある。
シーズン途中入団ながら既に二試合に登板して二勝、しかも計11イニング投げて自責点0という左投手のオセゲラに対して、ファイターズのスターティングメンバーは、
(指)西川遥輝
(遊)大引啓次
(中)陽岱鋼
(一)アブレイユ
(三)小谷野栄一
(左)赤田将吾
(捕)鶴岡慎也
(右)杉谷拳士
(二)中島卓也
右打者を徹底的に並べるでなく、西川と中島卓也は左打者。しかしこの時点でベンチに残っている右打ちの野手は大野奨太と飯山裕志だけなのである。逆に左打者は明日15日の予告先発投手である大谷翔平を別にしても近藤健介、稲葉篤紀、今浪隆博、佐藤賢治。左打者に偏り、右打者が手薄だ。こういう時には相手の左の先発投手を早めに降板させなければならないのだが、六回まで持たせてしまった。
七回から右投手の柳瀬明宏を引っ張り出したはいいものの、今度は左のリリーバー、森福允彦の投入を頭に入れながら左の代打を誰のところで使うかを考えなければならない。
八回表、2イニング目に入った柳瀬から先頭の鶴岡慎也がセンター前に弾き返して出塁したところでホークスは森福を投入した。杉谷拳士はスイッチヒッターだから右打席に入ればいいが、左対左となる中島と西川には出来れば代打を送りたい。しかしベンチには右打ちの野手が二人しかいない。そしてその一方の飯山は鶴岡の代走に起用された。走者を二人出して大引で勝負を賭ける逆転狙いかと思ったが、杉谷に送りバントをさせて中島に代打大野。何のことはない。鶴岡に代走を送って二人目の捕手が守らなければならないからその選手を代打で使う。層が薄ければ、無駄な選手起用を避ける。それはいいだろう。しかし、そうであるならば、鶴岡の代走に飯山でなく今浪隆博という手はなかったのか…。
この回で逆転出来れば、飯山を二塁に入れて守備固めで問題ないだろう。でも杉谷にバントをさせたということは何とか同点にしたいという戦法。ならばもう一回打順が回る可能性のある鶴岡の代走には守備力に優る飯山より、打撃に期待が出来る今浪を起用すべきではないのか、脚力、走塁力に関しては飯山でも今浪でも大差ないと考える。実際、大野と西川が森福の前に倒れてこの回無得点に終わると、九回表、二死満塁で飯山に回る打順になった。
主砲、中田翔が欠けて、その穴が埋まらないのは仕方ないにしても、当初こそ中田と入れ替えで一軍に昇格した同じ右打ちの外野手、石川慎吾を起用していたが、力不足とみるや、代わりに外野の一角を担ったのは本職が捕手の近藤だった。西川も二軍から昇格寸前に付け焼き刃のように外野守備を経験した(その西川は一軍では一塁を守っている)。
中田の穴が埋まるとは思わないが、外野手の代わりを外野手に託せないのが情けない。佐藤は頑張っていると思うが、鵜久森淳志はどうしたのか、近藤に外野を守らせるくらいなら、尾崎匡哉 ににわか仕込みでも外野をやらせた方が右打者の層は厚くなる。11日のジャイアンツ戦でイースタン・リーグの年間黒星の新記録を更新してしまったファイターズのファームは勝てないばかりか、いやその結果が示すとおり、人材も供給できない。二岡智宏に頼り切っていた右の代打は二岡が調子を落とすと誰もその穴を埋められない…。
そんなアンバランスな打線の援護に恵まれずに2失点で負け投手になってしまうのが昨年のMVP、吉川光夫。「今年のカムバック賞は吉川に!」などと皮肉を込めたジョークをツイッターで何度か呟いたが、今日は調子が悪いなりに相手を抑えるなど、12個の黒星からの収穫を感じさせた。前回が完投負けで、中五日で六回119球。木佐貫並みに長いイニングを託され始めた。シーズン前半の吉川だったら、今日の立ち上がりの調子ならもっともっと失点していただろう。あの頃の吉川なら、一部のファンは「鎌ヶ谷からやり直せ!」とヤジったことだろう。敗戦処理。はある事情からそうは言えないが…。伊達にリーグ最多敗でありながら規定投球回数に達しているのでないところがうかがえる。福岡のテレビを観ていると、この試合を振り返るスポーツニュースでは吉川のことを「ファイターズの先発はエースの吉川」と語るものが多い。吉川はそういう目で見られているという事を自覚して欲しい。“ホークス”が主語の地元局としては相手の“エース”を攻略して勝ったことにした方がファンの食いつきが良いというのもあるにせよ…。
今日の黒星でファイターズは3位ホークスとのゲーム差が5.5ゲームに拡がり、クライマックスシリーズ進出が再び苦しくなった。
だが、吉川が重ねていく黒星の中から何かをつかみ、一流の左投手をからっきり打てない西川がこの経験を活かし、中島も…鎌ヶ谷が人材供給源としての役目を果たせなければ、一時的にでも一軍で育てていくという手法をとらざるを得ないのかもしれない。ファームで実戦から離れている中村勝を一軍に呼び寄せているのもそうした事情かも知れない。
吉川を筆頭に「倍返し」、「十倍返し」してくれる日を信じている。
しかし敗戦処理。が福岡に行くと勝てない…。チームの北海道移転後、関西圏での出張観戦は8勝0敗と負け知らずなのだが、福岡は3連敗。ファイターズがホークスに福岡で勝ったのを観たのはキップ・グロスが完封勝ちしたのが最後だから20世紀のことだ<苦笑>。ヤフードーム、ヤフオクドームとなってからは勝ってない。宮崎県のサンマリンスタジアムでのファーム日本選手権でもファームがドラゴンズに二連敗しているから九州が鬼門なのかもしれない…。「お前が行くから負けるんだ」と言われそうだが、来年、機会があればまたリベンジしたい…。
P.S.
【今日のオマケ】
球場のネーミングライツが“ヤフオクドーム”に変わって「いざゆけ若鷹軍団」のあの部分が変わるのか、それともそのままなのか気になっていたが…
♪勝ちどきあげろ ヤフオクドーム!
【今日のオマケ2】
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コメント
チェンジアップ様、コメントをありがとうございます。
> 彼を過小評価するわけじゃないですけど、勝ち負けは巡り合わせもあると思いますね。
今年、ダルビッシュや岩隈観てて、負け投手だったのが、降板後、同点に追いついて、負けが消えたというのを観たりしてますし。
「運も実力のうち」という言葉がありますが・・・。
確かに「運も実力のうち」ですね。
今年の吉川は完全に悪循環ですね。
昨年の吉川が本来の姿か、今年の吉川が本来の姿か、来年が真価を問われる年になりますね。
> そうですかねぇ。99年かな?ダイエー優勝で、ダイエー姫路店(今はないです)で、優勝セール行った時に、ずっとダイエーバージョンをずっと聞きっぱなしで、ソフトバンgクバージョンを聞いたら、歌詞変わってるだけとか思ったり。機会があれば両方聴いてみますね、ユーチューブとかにあるといいんですが。
機会があれば両方を聞き比べて下さい。
歌詞はほとんど変わっていませんが、アレンジは一変してますよ。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年9月29日 (日) 20時48分
おはようございます。
栗山監督が吉川について
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130928-00000034-dal-base
だそうです。
で、逆バージョンの楽天・田中ですけどね。私、今年、彼をじっくり観た試合がコレ
http://bis.npb.or.jp/2013/games/s2013042300392.html
なんでね。彼を過小評価するわけじゃないですけど、勝ち負けは巡り合わせもあると思いますね。
今年、ダルビッシュや岩隈観てて、負け投手だったのが、降板後、同点に追いついて、負けが消えたというのを観たりしてますし。
「運も実力のうち」という言葉がありますが・・・。
かつての西武の西口を思い出したりなんかして・・・。
>え、そんなことないでしょう。歌詞は大きな変更がないですが、アレンジとか完全に別の曲じゃないですか。
ソフトバンクバージョンに慣れている人がダイエーバージョンを聞いたらびっくりすると思いますよ。
そうですかねぇ。99年かな?ダイエー優勝で、ダイエー姫路店(今はないです)で、優勝セール行った時に、ずっとダイエーバージョンをずっと聞きっぱなしで、ソフトバンgクバージョンを聞いたら、歌詞変わってるだけとか思ったり。機会があれば両方聴いてみますね、ユーチューブとかにあるといいんですが。
投稿: チェンジアップ | 2013年9月29日 (日) 08時45分
チェンジアップ様、コメントをありがとうございます。
> こんにちは。まあ吉川のピッチングを観てないので、何ともですが、数字だけ観ると防御率は7位で3点台だから、悪くはないと思いますけどね。
失礼な言い方になってしまいますが、仰る通り“数字だけ観る”印象と、登板を見る印象の違いがあると思います。
例えばセイバーメトリックスのQSでいえば“6回で3失点”はぎりぎり合格ですが、先に序盤に3点を失い、リリーフを早々と使いたくないから続投させて…というのは同じであっても観る側の印象は良くないでしょうから。
> 逆を行ってるのが、楽天・田中なわけですが、巡り合わせってありますよね。
田中は内容と結果が比例しているんじゃないですか。
> 規定投球回数に達してるわけだから、ローテーションはキッチリと守れてると考えたら、まずまずじゃないでしょうか?
それをまずますと見るか、物足りないと見るか、吉川への期待の度合いで変わるのでしょうね。昨シーズン後の故障発覚から考えれば投げられているだけでも上出来なのでしょうが…。今季はこのまま最後まで故障無く投げ通して欲しいです。
> オマケですけど、まあ、福岡ダイエーホークスからソフトバンクホークスになった時も、あの歌はダイエーがソフトバンクになっただけですから、手抜きと言いますかね・・・。
え、そんなことないでしょう。歌詞は大きな変更がないですが、アレンジとか完全に別の曲じゃないですか。
ソフトバンクバージョンに慣れている人がダイエーバージョンを聞いたらびっくりすると思いますよ。
> 開閉式でありながら、開閉にお金がかかるので、開閉の意味があまりしてないんですよね、あそこ。
作った時には壮大な夢があったのですよ。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年9月16日 (月) 13時01分
こんにちは。まあ吉川のピッチングを観てないので、何ともですが、数字だけ観ると防御率は7位で3点台だから、悪くはないと思いますけどね。
逆を行ってるのが、楽天・田中なわけですが、巡り合わせってありますよね。
1失点でも負け投手になったり、5失点でも勝ち投手になったり。
もっというと一球で勝ち投手や負け投手になったりしますからね。
規定投球回数に達してるわけだから、ローテーションはキッチリと守れてると考えたら、まずまずじゃないでしょうか?
吉井氏も「勝ち星よりローテーションを守ることの方が大事なんだ」と200勝云々の話で語ってましたし。
オマケですけど、まあ、福岡ダイエーホークスからソフトバンクホークスになった時も、あの歌はダイエーがソフトバンクになっただけですから、手抜きと言いますかね・・・。
開閉式でありながら、開閉にお金がかかるので、開閉の意味があまりしてないんですよね、あそこ。
昔、セガサターンのグレイテストナインをやってる時は、開閉を選択出来たので、大抵、開けてました、私。
投稿: チェンジアップ | 2013年9月15日 (日) 17時04分