ジャイアンツがセ・リーグV2を果たす!
何が異質かと言って、今年ほど安心して見ていられた年はなかったということだ。慎重派のファンは、リーグ優勝が決まるまで何が起こるかわからないと直前まで慎重な姿勢を崩さなかったが、逆に言えば、“何が起こるかわからない”と言うほどのことが起こらない限り、ジャイアンツの優勝は間違いないと思っていた。
昨年も結果的にはぶっちぎりの優勝だったが、開幕からつまずき、一時は“V確率0%”などと報じられたこともあった。そこから盛り返しての優勝だった。しかし今年は山はあっても谷はない。順調に優勝に突き進んだシーズンに傍からは見えた。今年、拙blogでもジャイアンツに関わるエントリーが観戦記を除けばめっきり減っているのも、これといった問題が無いからだろう。昨年はセ・リーグ五球団以外に朝日新聞や週刊文春という敵に悩まされたが、今年は目の前の対戦相手だけに集中出来たはずだ。
これから、“あの時には実はああだった”と優勝までのエピソードが一つ一つ明らかになってくるだろう。もちろん、我々ファンには気付かれぬところで選手達はもちろん裏方さんも含め、表に出ない苦労を重ねた上での優勝決定なのだろうが、そういった部分をファンに見せないで優勝すると言うことは理想的な優勝と言えるだろう。
今年は拙blogでも過去に指摘した課題が着々と改善された。
クローザーが固定されないという課題も今年は終始西村健太朗で固定された。
昨年も西村がクローザーを務めるケースが多かったが、スコット・マシソンのコンディションが万全の時にはマシソンが優先されるケースも目立った。今年は西村、マシソン、山口鉄也と三人揃ってシーズンを(ここまでは)故障無く過ごしている。西村は今日(22日)で今季のセーブ数が40となったが、通算のセーブ数が73となった。ジャイアンツの歴代通算最多セーブはマーク・クルーンと角三男の93。通算100セーブ以上を挙げた投手がいないのは、後発のゴールデンイーグルスを除くとバファローズ(阪急時代から継続して)とジャイアンツだけなのだが、来年にも到達の可能性が出てきた。
また、自前で探してきた外国人選手が働かないと言われて久しいが、今季、開幕戦で来日初打席に本塁打というデビューを飾ったホセ・ロペスが完全に打線の一角を担った。6月下旬に左脇腹痛を起こし、ほぼ一ヶ月間戦列を離れたためにまだ年間の規定打席にこそ到達していないが、今日の4打席を足して442打席。明日にも年間の規定打席446に達成出来そうだ。
アレックス・ラミレスやタフィ・ローズ等日本の他球団経由でないジャイアンツの自前で探してきた外国人選手が年間の規定打席に達したら、1995年、1996年のシェーン・マック以来で何と17年ぶりである。三割を打てば、同条件下ではウオーレン・クロマティ以来。右打者の自前の外国人では初めてで、自前でない外国人選手を含めてもラミレスと二人だけ。
課題が克服され、シーズンの推移に波が無く、波乱のないペナントレース展開となったため、ことジャイアンツに関しては今年は拙blogでも結果的に書くネタが少なかった。既に一部の方から“今年は他球団が弱すぎた”という意見が出ていますが、まあ取りあえずジャイアンツが強かったと言うことにしておきましょう。
原辰徳監督のリーグ優勝回数はこれで6回目となり、ジャイアンツでは長嶋茂雄監督の5回を超えて上にはV9の川上哲治監督ただひとり。敗戦処理。よりも年上の、川上監督時代のジャイアンツを知る人に言わせると、原監督は長嶋監督と比較するより、川上監督と比較すべきと言っていた。比較になるのはその非情さだ。
確かにヘルメットにある“GIANTS PRAIDE”とは「GIANTSのために個々のPRIDEを捨てよ」というメッセージに読み取れる。
今でこそ打撃が安定してどっしりと四番に座っている村田修一はDH制のある交流戦では九番打者を打たされた。
余談だが村田はベイスターズ時代にも九番に降格されたことがある。時の牛島和彦監督に「九番を打ってもらう。これがどういう事かわかるな。次はどうなるか…」と言われ、「一番ですか」と答えたという。昨年、試合の序盤で引っ込められて、原監督から「修一、今日はもう帰って良いぞ」と言われてその通りに家に帰ってしまったそうだが、それだって原監督の本意だったのかわからない。本当はそう言われても何事もなかったようにベンチでチームメートに声援を送るくらいの図太さが欲しかったのではないか。
他にも力の落ちたベテランには容赦なくファームでの再調整を命じる。高橋由伸は結果を出しているから試合に出ていられるに過ぎない。
また上述のロペスを始め、クリーンアップにも容赦なくTPOに応じて送りバントを命じた。
ただその一方で、期待の裏返しなのか、あえぎ苦しむ澤村拓一には敢えて先発ローションから外さないかのように思えた。
最近になってようやくリリーフに回しているが…。
すべては勝利を優先、勝利の結集がファンが喜ぶ優勝に直結する。だとしてもしかし個人的には依然として、選手を将棋の駒のように扱う監督は好きにはなれない。
他球団を圧倒したという点では130試合で88勝した藤田元司監督時代の1990年が思い出されるが、あの年は日本シリーズでライオンズにまさかの四連敗。今はあの当時と違って日本シリーズの前にクライマックスシリーズがあり、昨年はファイナルステージでドラゴンズにあれよあれよという間に三連敗を喫し、ジャイアンツファンが荒れたのを記憶している。その意味ではまだまだ予断を許さない。
早い時期にリーグ優勝を決めてクライマックスシリーズに備えた準備が出来るのは2位、3位のチームに対するアドバンテージの一つだろう。既に敗戦処理。は昨年同様に、ファイナルステージの最終戦、10月21日の第6戦のチケットを先行予約で申込済み。そこまでもつれたら、また一球たりとも目を離せない胃の痛くなるような戦いを満喫したい。
※ 9月22日のジャイアンツ対カープ戦を生観戦した訳ではないので、写真は過去に撮影したものを使用しています。原監督の胴上げシーンは昨年のクライマックスシリーズのものです。
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コメント
長緯様、コメントをありがとうございます。
> 自分は安心していていたような、不安だったような気持ちでシーズンを過ごしました。
山口、マシソン、西村の鉄壁さゆえ、このうち誰かが調子を落としたり、故障したらどうなることかという変な不安がありました。
確かに、阿部の代わりは短期間なら實松で何とかなりますが(現状その實松も故障していますが)、この三人の代わりはいないですね。昨年なら福田と高木京で一時凌ぎが出来たかもしれませんが今年は落差が大きいですね。
> チームMVPは、厳しい場面での登板が続き、試合もシーズンも締めたということで西村を推したいです。
なるほど。今年は文句なしの守護神っぷりでしたね。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年10月 1日 (火) 01時07分
遅くなってすみませんが、優勝おめでとうございます。
自分は安心していていたような、不安だったような気持ちでシーズンを過ごしました。
山口、マシソン、西村の鉄壁さゆえ、このうち誰かが調子を落としたり、故障したらどうなることかという変な不安がありました。
打線では坂本と長野が最後まで本調子にならず、最後に村田が調子を上げてくれたおかげで阪神を大きく振り切ったという印象です。
ですので、先発陣も完ぺきという感じでなかったことも加え、多少CSが心配ではあります。
チームMVPは、厳しい場面での登板が続き、試合もシーズンも締めたということで西村を推したいです。
投稿: 長緯 | 2013年9月30日 (月) 12時15分
met様、様、コメントをありがとうございます。
返信がおそくなってすみません。
> 昨夜の胴上げも含めて、本日のデーゲームもあり、
この広島3連戦は現地観戦をしてきました。
昨年と2009年の勢いから推定して、このカードで胴上げがあると踏んで、
7月時点で購入しておいたのが一応は報われました。
素晴らしい読みでしたね。
21日には私の知り合いが相当数東京ドームに行っていたようですね。
私は今年は諸々あってこの時期観戦には行けませんでした。
昨年は「この日だ!」と絞って、どうせならリッチな気分でとOBの解説付きのレジェンドシートを仲間内で買いましたが、優勝決定の翌日になってしまいました。
緒方耕一の普段はなかなか聞けない話を聞けたのは良かったですが、杉内が9失点、あげくに故障してCSと日本シリーズを棒に振るという凄い試合でした。
優勝決定の翌日で大胆な選手起用が目立ち、大量にリードされた終盤には三塁・大田、二塁・亀井という、ビールの飲み過ぎで気分が良くなったところを一瞬で酔いを覚ますシーンを記憶しています<笑>。
日程の巡り合わせもあるでしょうが、本拠地の球場で試合に勝って決めるのが一番ですね。
私は昨年と2009年の日本一を決める試合を生で観ていますが、どちらも相手がファイターズということで複雑な面がありました。
が、今年は何のためらいもなく(CSを勝ち抜いたらの話ですが)日本シリーズを応援できそうです。
> MVPの話題が出ていますが、
やはり2ヶ月連続月間MVPの村田ではないでしょうか。
前半は間違いなく阿部でしょうが、後半は村田ではないかと思います。
私の意見はのんきさん宛のコメントの通りですが、村田という声も多数出るでしょうね。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年9月24日 (火) 23時40分
のんき様、コメントをありがとうございます。
返信がおそくなってすみません。
大変詳細な分析ありがとうございます。
> ただ、肝心な夏場になって、阪神に直接対決に優勢に戦えたのが、2位との差が広がった一番の理由だと思います。
大きな差は無かったと思いますが、夏場の直接対決を制したのがそのまま差になりましたね。
> 敗戦処理。様的には、リーグ優勝チームのMVPは誰だと思いますか?
今年一年に限って考えてで、山口を選びたいですね。
個人的には、今年のMVPは今年の成績で選びたいと思います。
村田、阿部、山口、菅野、内海が特に貢献度が高いと思います。
metさんが“抑えて当然”の印象があると仰っていますが、そうなることが凄いのです。
西村の、試合の最後に投げる、自分のあとには誰もいない的な緊張感の中でのセーブも素晴らしいですが、山口が相手打線にむきかけた勢いを止めるケースが目立ったと思います。
昨年から書いていますが、山口は他球団のセットアッパーのように八回の1イニングを投げるのが仕事とは限りません。
七回以降の、ここが山だという場面で臨機応変に登板して相手を抑えます。この貢献度は大きいと思います。
打線の中心である阿部と村田、特に7月以降の村田の破壊力も捨てがたいですが、年間を通してのコンスタントな働きという点で山口を私は選びたいです。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年9月24日 (火) 23時39分
敗戦処理。さん、のんきさん、皆さん、こんばんは。
昨夜の胴上げも含めて、本日のデーゲームもあり、
この広島3連戦は現地観戦をしてきました。
昨年と2009年の勢いから推定して、このカードで胴上げがあると踏んで、
7月時点で購入しておいたのが一応は報われました。
阿部のまさかの欠場がなければ土曜日の初戦で決められたのかも知れませんが、
消化試合となることもなく3戦とも充実した内容であったので、
相応に満足しています。
MVPの話題が出ていますが、
やはり2ヶ月連続月間MVPの村田ではないでしょうか。
前半は間違いなく阿部でしょうが、後半は村田ではないかと思います。
あと投手では新人ですが菅野の貢献度も高いように思いました。
#後ろ3人ももちろんですが、抑えて当然感もあるので…
昨年のCSの冷や汗ものもあるので、今年は3,4戦で蹴りをつけて欲しいですね。
#昨年のCSは1戦と6戦を現地観戦しました。
では、また。
投稿: met | 2013年9月23日 (月) 21時08分
敗戦処理。様、おはようございます。のんきです。
今年は、WBCに7選手を派遣して、戻ってきた選手が、開幕当初不調だったのが、予想通りだったとはいえ、どうなるのかと心配でした。
ただ、幸か不幸か、WBC組がいない間、オープン戦で、別の選手が出ることにより、チームの底上げができたのではと思いました。
実際、野手は支配化登録されている選手のほとんどが1軍を経験しているというのがその効果を証明しているのかもしれません。
大田が物足りない印象がありましたが、話題が先にたって、実際あの程度の選手なのかも知れません。
投手では、笠原の成長にびっくりしました。まずは、プロの体つきになっていました。潜在能力では、小山より上と思います。笠原はコントロールがあれば、先発もできるのではと思います。
逆に、昨年中継ぎで活躍した、田原、高木京がぱっとしなかったのは、相手チームに研究されたのかと思います。
今年、例年より、安心して見られたのは、開幕ダッシュに成功したからだと思います。
ただ、阪神が西岡の補強などで調子がよく、先発の能見、スタンリッジ、榎田に当初さっぱり打てなかった印象があります。直接対決で三連戦で1分2敗ということもあったと思います。ずっと巨人打線が阪神投手陣に0行進というのも印象が強いです。
ただ、肝心な夏場になって、阪神に直接対決に優勢に戦えたのが、2位との差が広がった一番の理由だと思います。
また、広島と横浜に大きく勝ち越したのが貯金を作った要因だと思います。逆に、ヤクルト、中日、阪神とは対戦成績はほぼ5分だと思います。
リーグMVPはバレンティンでしょうが、巨人のMVPは誰かを考えてみました。
優勝後に阿部が言っていましたが、私も山口だと思います。1年だけ活躍する選手で次の年はさっぱりという選手はたくさんみて来ましたが、6年連続して、多くの登板をして、好成績を残す選手は少ないと思います。
山口もWBC組で、今年は例年のような球は少なかったとは思いますが、結果的にホールドポイントも多くとり、勝利に貢献したと思います。
敗戦処理。様的には、リーグ優勝チームのMVPは誰だと思いますか?
のんき
投稿: のんき | 2013年9月23日 (月) 07時36分