【裏読み!?】「4522敗の記憶」~人の振り見て我が振り直せ!?
おそらくは購入者の大半はホエールス、ベイスターズファンだと思えるが、敗戦処理。も38年間には及ばないものの25年待たされたことがある身。読んでいて他人事とは思えなかった。
そう、ファイターズとだぶる点が多々あると思えるのだ。
ベイスターズで1998年に日本一になった主力メンバーの多くはベイスターズで現役生活を終えていない。
(遊)石井琢朗=引退勧告を拒否してカープに移籍
(中)波留敏夫=シーズン途中にドラゴンズにトレード
(左)鈴木尚典=ベイスターズで2008年限り現役引退
(二)ローズ=契約交渉で決裂して退団
(一)駒田徳広=ベイスターズで2000年限りで現役引退するも権藤博監督とトラブル。
(右)佐伯貴弘=2010年戦力外通告。ドラゴンズで現役続行
(三)進藤達哉=ブルーウェーブに移籍
(捕)谷繁元信=FA権を行使してドラゴンズに移籍
(投)佐々木主浩=FA権を行使して大リーグのマリナーズに移籍。
21世紀に入ってからの長期低迷の一因が、良き時代を継承できる人材の流出だとすれば、レギュラー野手8人のうち、2人しかこの球団で現役生活を終えていないというのは確かに異常だ(ローズは後にマリーンズに入団)。しかもそのうちの1人は最終戦で花道をつくってもらいこそしたものの、監督と起用法で衝突があったことが周知の事実となってしまい、ばつの悪さが残った。
この経緯はファイターズが後楽園時代にリーグ優勝を果たした1981年のメンバーのその後と比べると妙にだぶる。
(中)島田誠=ホークスにトレード
(遊)高代延博=引退勧告を断り、カープに移籍
(右)クルーズ=打率三割を記録しながらスロースターター等を理由に解雇
(一)柏原純一=タイガースにトレード
(指)ソレイタ=本塁打量産も永射保等特定投手に歯が立たない等を理由に解雇
(三)古屋英夫=タイガースにトレード
(左)井上弘昭=一度は現役引退表明するもライオンズで現役続行
(捕)大宮龍男=ドラゴンズにトレード
(二)菅野光夫=ファイターズで現役を引退
(投)江夏豊=ライオンズにトレード。
どちらの球団でも他球団に移籍後に引退して、指導者として復帰する例が散見されるが、功労者を追い出したり、去る者は追わずとばかりに冷遇するようではチームに根付かず、チームに残っている選手にも少なからず影響を及ぼす。「4522敗の記憶」でも、1998年の日本一イヤーを中心に五年連続Aクラスと生まれ変わったはずのチームがその後11年間で一度しかAクラスに入れず、近年は最下位が指定席(2013年にようやく脱出)と長期低迷を続けている原因の一つに主力選手の流出を挙げている。
ファイターズも1981年V戦士の多くがトレードなどでチームを離れている。まだFA制がない時代、即ち選手に移籍の権利が認められていない時代にこれだけ多くの選手が流出しているのは球団フロントに問題があると言わざるを得ないだろう。
結果、ファイターズは東京ドーム時代を経て北海道移転後に次の優勝を達成するまでに25年、四半世紀を要した。
ファイターズの2006年、そしてそれ以降の隆盛はもちろん北海道移転が大きな転換期になったのだろうが、それを機に、「今まで通りではいけない」と試行錯誤してたどり着いた先に栄光があったのだろう。その点ではベイスターズも本拠地移転こそないものの、親会社が変わったというのは明るい兆しかもしれない。
「4522敗の記憶」では主力選手流出の経緯においてフロントの無頓着ぶり、人を大切にしない失態の数々が記載されているが、東京時代のファイターズのフロントもたぶん同じように杜撰、いい加減だったのではないかと読みながら感じた。
一説では近年ほどフロントと現場の境界が明確でなかった時代、ファイターズでも監督の評価がその選手のすべてを決めかねない実態があったようで、功労者であってもばっさり斬ったのは監督を勇退してフロント入りしていた大沢啓二球団常務ではなく高田繁監督だと見られている。優勝当時の正捕手、大宮龍男などはオフにトレードの噂が報じられるもまとまらず、自主トレを視察に来た高田監督に「トレードが決まらなかったようなので、今年もよろしくお願いします」と挨拶したほどだ。大宮がドラゴンズにトレードされたのはその翌年だった。
また、「4522敗の記憶」の第二章では正捕手だった谷繁元信の流出がチーム低迷のターニングポイントだった旨が繰り返し強調されている。もちろんベイスターズファンの多くもそう認識しているだろう。この“谷繁”を“糸井”に置き換えると、十年後にファイターズで同じ内容の本が書けるかもしれない、というのは悲観しすぎだろうか…。
ポジション的には今季中にFA権を取得した鶴岡慎也も十年ちょっと前のベイスターズの谷繁に相当するマイナスをもたらすかもしれない。これは難しいところだ。球団側としては、捕手にほぼ同じレベルの捕手が同時に二人いるというのはありがたいことだろう。一人に負荷がかかりすぎるようであれば、事前にもう一人の捕手に起用をシフトすればいいし、先発投手によって分けることも出来る。だが捕手本人にとっては面白くないかもしれない。起用の度合いが6:4であれば、それを8:2や9:1にして欲しいと思うのは自信があれば当然だろう。
栗山英樹監督はベイスターズの前身、ホエールズを日本一に導いた三原脩監督を目標にしている。背番号80も三原監督のホエールズ時代の背番号に由来している。栗山監督は就任一年目に日本一こそ逃したが、リーグ優勝を果たした。そして今年、前年の優勝から最下位に転落したが、これも三原監督の追従か<苦笑>。
ホエールズ、ベイスターズの流れをファイターズと同一視するのはあまりにも大雑把な比較であることは承知している。また、近年のファイターズの成績安定が選手達だけの力ではなく、フロントの計画的なチーム編成があってのものだというのは理解しているつもりだ。だが、グラウンドレベルの戦いが、毎年やられたらやり返すの繰り返しで、現に今年のファイターズの用に前年の優勝チームが最下位に転落することもあり得るのと同様に、フロントも一年一年が勝負なのではないか?大リーグをモデルにした選手査定システムにしろ、他球団がより実態に即した数値の換算をすれば、先行球団が取り残される可能性はある。フロントが井の中の蛙になっていたら、それに気付かずにフロント主導で運営される球団の選手もファンもたまったものでは無い。そして既にこのチームは主力選手の流出が他球団より多い様に思える。
以前から“稲葉篤紀、金子誠、武田久の三人はこのチームで引退させろ”、“稲葉篤紀、金子誠、武田久の後継者をしっかり見つけろ”と主張してきたが、後者もさることながら前者をあらためて強く感じた。
ファイターズのファンは暖かい人が多い。敗戦処理。が否定的なことを拙blogで書いたりtwitterで呟くと、「そんなことはないですよ」と楽観的、球団側に好意的な反応が多く帰ってくる。ここまでファンから温かく見守られる信頼関係を築くことに成功した球団の努力には敬意を表するが、それがいつまでも続くとは思わないで欲しい。今シーズンの終盤の戦い方を見ていると、また今年から25年くらい優勝から遠ざかるのではないかと悪い予感すらする。1981年の優勝の直後だってそんな不安はなかった。誰があの時点で25年間も優勝出来ないと想像しただろうか…。因みにあの当時は大沢監督の元、1981年を含んで六年連続Aクラス入りを果たしていた。この長さは北海道移転後にもない…。
敗戦処理。は結果的に25年間待ったのだから、また再び当てもなく25年間でも待つ覚悟は出来ている。何回か書いているが、「せめてもう一度、生きているうちに優勝して欲しい」と願っていたのが、それから四回もリーグ優勝を果たしているのだ。何があっても付いていく覚悟は出来ている。しかしそういうファンが多数だとは限らない。今年は許してくれても、二年、三年、こんな不甲斐ない成績が続いたら見捨てていくファンが少なくすむとは思わない。
今年の低迷がたまたまなのか、再びの低迷期への入口なのかは敗戦処理。にはわからない。しかし「4522敗の記憶」を読むと、低迷にはすべて原因があるということがうかがえる。
「4522敗の記憶」は基本的にホエールズ、ベイスターズファンのために書かれたものであろうが、他の球団のファンも自分の贔屓球団の低迷期をなぞらえれば感じるところがあると思う。球団によってはもうオフシーズンが始まっている。「読書の秋」でもあることだし、ホエールズ・ベイスターズファンはもとより他球団ファンも目を通して損のない一冊だと思う。
10月15日追記
10月13日に行われた「東京野球ブックフェア」で「4522敗の記憶」 の著者、村瀬秀信さんと直接話をする機会を得た。何と、このエントリーに目を通して下さっていたとのこと。blogの書き手としては光栄の極みである。あらためてお礼申し上げます。
感謝の意を込めて、村瀬さんの思い入れの強い選手の中から一人、懐かしのショットを…。
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コメント
05年からのFsファン様、コメントをありがとうございます。
> このエントリーと「やっぱりファイターズは壊れていく…」のエントリーを読ませてもらいました。
敗戦処理。さんは球団の低迷・ファン離れを懸念していますが、自分としてはそのような心配はしておりません。
それはいいですね。
> 自分がファイターズファンになったきっかけは小笠原選手ですが、今でもファンを続けている理由はファイターズが好きだからです。常に挑戦を続けていく、常識にこだわらないその姿勢が好きだからです。
こういうファンの人を球団は大切にして欲しいですね。
> もちろん結果が出ないという理由で離れるファンもいるとは思いますが、自分みたいな人間も少なくないと思っています。
信賞必罰で、結果が出なくてファンが離れるのは仕方ないと思いますけどね。
それがいやなら球団は結果を出せばいいだけの話ですから。
> ファイターズが挑戦をやめない限り、一時はなれることはあっても、必ずファンは戻ってくるし、それだけの結果を出す日が来ると僕は信じています
そうあって欲しいです。そのためにも秋季キャンプ、オフの過ごし方を大切にして欲しいですね。
> 稚拙で、幼稚な文章ですみませんが、読んでいただけたら幸いです。
とんでもない。貴重なご意見をありがとうございます。
2005年からのファンの方だと、今年の低迷もたまたまだとお感じになられるかもしれませんが、東京時代から応援していると、どうしても悪い方、悪い方へと考えてしまいがちです。
そこにこの本を読んだら、重なり合う点が妙に多くて。
今年がその入口にならないよう、来年は違う形を見せて欲しいと思います。
救いは著者の村瀬さんが「日ハムさんは大丈夫でしょう」と言って下さった点でしょうか<笑>。
投稿: 敗戦処理。 | 2013年11月 1日 (金) 23時00分
こんにちは
このエントリーと「やっぱりファイターズは壊れていく…」のエントリーを読ませてもらいました。
敗戦処理。さんは球団の低迷・ファン離れを懸念していますが、自分としてはそのような心配はしておりません。
自分がファイターズファンになったきっかけは小笠原選手ですが、今でもファンを続けている理由はファイターズが好きだからです。常に挑戦を続けていく、常識にこだわらないその姿勢が好きだからです。
もちろん結果が出ないという理由で離れるファンもいるとは思いますが、自分みたいな人間も少なくないと思っています。
ファイターズが挑戦をやめない限り、一時はなれることはあっても、必ずファンは戻ってくるし、それだけの結果を出す日が来ると僕は信じています
稚拙で、幼稚な文章ですみませんが、読んでいただけたら幸いです。
投稿: 05年からのFsファン | 2013年11月 1日 (金) 14時02分