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2013年10月28日 (月)

プロ野球統一球問題の「調査報告書」を読んで。

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今年の日本シリーズ第
1戦を翌日に控えた25日、NPBは統一球問題に関する第三者委員会の「調査報告書」を公式サイトにて公開した。加藤良三コミッショナー(前コミッショナーと書くべきか)がすぐさま反論する当たり、二年前の“清武の乱”を彷彿とさせる間の悪さは否めなかったが、ともすれば結果、結論だけしかファンには報告されないということが起こりがちなことを考えれば、肝心なところは伏せられているにしても、「調査報告書」が公開されたことの意義は大きいと思う。

そこで、既に精読された方も多いと思うが、日本シリーズの移動日にあたる今日29日、感想を記したい。


(写真:東京ドームにある野球殿堂博物館で販売されていた加藤良三コミッショナーのサイン入り統一球。騒動発覚以来、“2011~2012年使用球”との但し書きが…。 20137月撮影)



「調査報告書」
(以下“報告書”)はNPBの公式サイトから読むことが出来る

この事故報告書に書かれていることを要約すると、


2011年から加藤良三コミッショナーの主導により、それまで各球団ごとに試合球をメーカーと契約し、反発力他の基準を満たしていれば主催試合に使用していたものをすべて統一し、なおかつ国際試合(原則WBC)をモデルにし、MLBが使用する、日本のそれまで各球団が個別に契約していたものより飛ばない反発力に統一させる趣旨でミズノと契約したが、規則内で下限いっぱいに飛ばない反発力のボールを作成するように指示したにもかかわらず、実際に作られて試合で使用されたものはルールで定められた範囲よりも飛ばないボールが多数だった、そして二年経過して「以前のボールの方が良かった」等のいくつかの球団の要望などもあり、また飛ばなさすぎるボールの反発を修正することに踏み切ったが、その修正を使用する選手、球団は元より、マスコミ、ファンにも隠してこっそり行ったため、選手会の問い詰めに白状した結果、一連の大騒動になった。


 NPBの下田邦夫事務局長が中心になってミズノに修正をさせたが、加藤良三コミッショナーにその事実が伝えられていたかというと、一度は相談したと公言した下田事務局長が否定し、加藤コミッショナーも説明を受けてないと断言した通り、相談したと断定し得る証拠はなかった。ただ、だとしても加藤コミッショナーはちょっとした注意で気付くことは可能で、仮に知らぬ間に行われていたとしてもそれに気づき、止めることが出来なかったのは職務怠慢であると。そして、この報告書を読んだ加藤前コミッショナーは初めに結論ありきで許せないと怒り千万で自分の主張をマスコミに送りつけた。

この報告書の公表と、加藤前コミッショナーの反論が同じ1025日、つまり日本シリーズ第一戦の前日に行われたものであるから、二年前に同じく日本シリーズ第一戦の前日に記者会見が行われたいわゆる「清武の乱」同様に、日本プロ野球界最大の行事の一つである日本シリーズに敬意を表さない行動と呆れられている様だ。


確かにタイミング的には最悪に近いが、そのタイミングの悪さに気を取られていると事の本質を見失いがちだ。報告書の内容を整理しよう。


まずそもそもの問題は、加藤コミッショナーの提案で採用された飛ばない統一球が、その飛ばなさがルールで定められた基準よりさらに低かったということだ。つまりミズノはユーザーであるNPBから求められた基準を満たしていない不良品を納品していたことになる。ミズノの担当者はボール一個一個を調べれば誤差がある。だから平均値を以て合格として欲しい旨をNPB側に伝えていたようだが、報告書によるとそんなレベルではなかったという。となると、そもそも何故ミズノに独占契約(しかも2011年~2013年までの三年契約)したのかという疑問が生じる。

ボールを統一するということは、それまでルールで定められた範囲の中であれば、各球団がチームカラーに合った反発度合いを指定してそれぞれのメーカーに作らせていた試合球を統一するということだ。それは反発の度合いを測定結果で統一すれば良いというだけで、投手にとっては生命線である感触も“統一”する必要があるから、事実上一社独占にせざるを得ないのは理解出来るが、一日に最大6試合、半年間ほぼ毎日(週に六日間)試合が続く中でミズノ一社に均一なレベルのボールを絶え間なく生産できるのか等の検証をどのようにした上でミズノに発注したかが残念ながら報告書には記載されていないようだ。

しかもその結果独占契約となったミズノとNPBの間では、NPBが求めた、両リーグがそれぞれ取り決めているアグリーメント(要するに取り決め事項)における平均反発力係数0.41340.4374の下限である0.4134を下限ではなく目標とし、0.40340.4234を許容範囲とする契約が交わされていたという。なおかつその契約が締結されたのがシーズンが始まった後で、シーズン前の21日にさかのぼって契約されたというから何をかいわんやだ。

そして実際、2011年と2012年に合計7回実施された、公式に行われた反発計数検査では契約上の許容範囲には収まっていたものの、アグリーメント上の許容範囲から逸脱していた。

2011年第1回検査(59日実施) 0.411
2011年第2回検査(629日実施)0.411
2011年第3回検査(98日実施)0.408
2011年第4回検査(1012日実施)0.405

2012年第1回検査(411日実施)0.409
2012年第2回検査(618日実施)0.411
2012年第3回検査(817日実施)0.406

繰り返すがアグリーメントで定められた基準は0.41340.4374である。ミズノ側の、ばらつきがあるから下限の0.4134を目標に設定してもそれ以下はあり得るを認めるにしても、一度としてその下限に達していないのは問題である。確かに、この異常値が出たのなら“手を加える”ことは必要だろうが、それを“こっそり”やったことはあるべき姿ではない。

“こっそり”やろうとした背景には敗戦処理。の推測だが、そもそもこういう数値が出ても不思議でない“許容範囲”を設定してしまった下田邦夫事務局長が(加藤コミッショナーに)内緒で手を加えようとしたのではないか。

ちなみに上記の検査結果は加藤コミッショナーにも伝えられてはいたが、例えば2012年第1回検査に関しては6球場の平均値が4.09で、最低値が0.407、最高値が0.412という詳細な検査結果を聞いて高低差が0.005に過ぎなかったことを評価したにとどまり、0.409という数値がアグリーメントの下限を下回っていることに言及しなかったという。加藤コミッショナーに報告したNPBの規則委員も説明をしなかったという。


この間、当事者である選手、球団はこのような異常値が出たボールを使用しているとは知らされていないから、この異常値の統一球の導入によって前年までより本塁打が減った等の顕著な傾向を、正規な範囲内での低反発の統一球に変更したことよる影響と捉え、「本塁打が減ったからファン離れに繋がる」「力のない打者の擦ったような打球が本塁打になるのがなくなるのはよいこと」等の議論が起こった。

2012
年の5月にはセ・リーグの理事会においてセ・リーグの運営部長が統一球は従来の下限値0.4134を中心に統一球が0.40340.4234に設定されている旨を説明したが特にそれに関する議論はなされなかったという。この理事会ではボールの仕様再変更を期待する意見が相次いだが慎重論も小数ながら出たこともあり、意見がまとまらなかったという。

そんな中、下田事務局長はこの報告書の中に再三登場するNPBのG次長とともにミズノに対し、4月の時点で統一球の仕様を変更した試作の依頼をしていた。しかしこのG次長が5月下旬に加藤コミッショナーと話をした際に「飛ばないからといって飛ぶボールに変えれば、打者の技術の進歩を妨げることになる」との趣旨のことを指摘されたため、上司に当たる下田事務局長に報告し、ミズノにも仕様変更を見送らせた。ミズノは既に仕様変更した試作品を試作結果とともに提出していた。


しかし、その後に行われた検査でも検査結果は契約上の許容範囲にこそ収まっているものの、アグリーメントの下限に達していない結果しか出てこないことに下田事務局長もさすがに懸念を感じ、下限値に達するものに修正する必要性を感じ始めたという。


そして1027(日本シリーズ第1戦当日)に行われた理事会で、出席していた加藤コミッショナーが日本シリーズの行事に参加するために退席した後に各球団の実行委員から「黙って変えちゃうのが一番いい」、「これだけの人が聞いていて漏れないわけないでしょう。漏らすなと言っても漏れる」等との意見が述べられ、下田事務局長はそれに対し「駄目ですよ、言っちゃ」と述べて、出席者が情報を漏らさないように制止して、秘密裏に仕様変更したい考えをにじませた。下田事務局長は、この種の議論は実行委員会の席ではなかなか結論が出ないと見なし、出席者から「事務局一任」を取り付けようと画策したという。

その後、
115日頃から9日頃にかけて、両リーグの計6球団がNPB事務局に対して意見書を提出した。ジャイアンツ、タイガース、ホークス、バファローズの四球団が見直し変更という意見で、ゴールデンイーグルスは現状通り、カープは両論併記の上、本文ではメジャーと同等であれば現状維持で良いという意見を記載したという。見直し必要の四球団ではジャイアンツが詳細なデータを多数引用した上で、「2013年シーズンから『新基準による統一球』での試合運営を要望します」などの意見を述べたという。渡邉恒雄球団会長が例の調子でボールの見直しを訴えていたこともあり、ジャイアンツの本気度は想像できよう。

そして同月中にミズノの上海工場にてボールの反発の度合いに影響を及ぼすゴム芯の低反発ゴム使用の割合を変更するなどして新しい統一球の試作品が作成された。結果、アグリーメントの範囲に収まるものとなり、今年のシーズンに“こっそり”導入されることとなった。

なお、2013年シーズンに使われた統一球は、2010年までの球団別統一球に比べれば反発力が低いが、2011年~2012年の飛ばなさすぎる基準の下限値を下回った統一球よりは飛び、なおかつアグリーメントの範囲に収まるという“理想的な”統一球だったことになる。

同じミズノで、それが可能ならば最初から今年の統一球を作れば良かったのではないかという疑問が起きる。もちろんこの二年の間に技術が進化した可能性もあるが…。

極めて単純に推測すると、加藤コミッショナーの低反発の統一球構想を現実化するために下田事務局長がミズノの担当者に指示する際の方向性の具体的な指示を誤ったがために大量の不良品を作らせてしまったが、もともと低反発球を導入すれば本塁打が減り、得点が減り、ロースコアの試合が増えるという先入観を背景にした「短期間で手を加えるべきではない」等の意見にも支えられて二年間はそのまましらばっくれていたが、さすがにヤバイと思い、修正を余儀なくされたがもともとコミッショナーに内緒で下限値を下回るものを作らせてしまった手前、コミッショナーにも報告できず“こっそり”手直しを進めたところ、その違いが一般ファンにさえも疑問を抱かせるほど顕著だったため、選手会からの突き上げもあって白状せざるを得なかったと。


そう考えれば、開き直りとも取れる加藤コミッショナーの態度も理解出来るし、その加藤コミッショナーの辞表をオーナー会議があっさり受理してしまうのも理解出来る。あくまでこの報告書に書かれていることがすべて事実だとしたらの話だが…。

それにしても、アグリーメントで定めている下限値を下回るボールを使用していたことにしろ、こっそり再変更したことにせよ、下田事務局長、NPBのG次長、ミズノの一部担当者らごく少数の人数だけの了解事項で決めてしまい、進行していたというのが今となっては理解に苦しむ。コミッショナーに報告した職員は異常値の件を説明しなかったのか?実行委員会などの席で話題が出た時に各球団の実行委員はなぜツッコミを入れなかったのか?仮に「事務局一任」だったにせよ、各球団の現場から2013年シーズン早々に「去年までのボールと違うだろ」との声は挙がるはずだ。シーズンが始まって約三ヶ月かかるまで白状させられなかったのか?


報告書において、差し障りのある部分にマスキングがされていたのはやむを得ないとしても、それでもなお疑問が残る点が多々ある。一般のファンの目の届かない部分をかなり白日に晒してくれた報告書には目から鱗の点が多々あるが、なまじ詳しく書かれているばかりにここは何故というのが出てくる。



特に、そもそも何故アグリーメントの下限にも満たないボールが出来上がったのか?ミズノとの契約締結に関わる経緯にも言及されていない。それに関してはこの報告書と直接の関係はないが、愛甲猛がいくつかのメディアで“初めにミズノありき”の決定に問題ありと言及している。第三者委員会のアドバイザーに桑田真澄が指名されていながら球界とスポーツ用具メーカーとの関係について報告書に記載がないのも疑問(あるいは桑田がいるからこそ記載がないのかもしれないが…)ではある。敗戦処理。の憶測ながら、まずそこからクリアにしないと、この問題の真相には踏み込めないのではないかとも思うからだ。

報告書には、今回の問題の元凶として野球機構組織のあり方の不備も挙げられている。これも非常に興味深いが、最新の野球協約との読み比べをしないと理解出来ない点もあるだろうし、機会を改めたい。

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