「楽天が巨人に勝つ日」!?
正直、今年のゴールデンイーグルスがここまでやるとは思わなかった。
星野仙一監督は4位に終わった昨年のシーズン終了後、「Bクラスに終わったら腹を切る」と言い放ったので、本当にBクラスになったらどうごまかすのか楽しみにしていたくらいだ<笑>。
星野仙一という野球人を好きか嫌いのどちらかに分類しろと言われたらためらわずに“嫌い”の方に分類するが、敗戦処理。は複数の球団で優勝する監督は手腕があると考えているので、既にドラゴンズとタイガースでリーグ優勝を経験しており、そのうえでゴールデンイーグルスでも優勝して、故三原脩さん、故西本幸雄さんに並ぶ三球団での優勝となった星野監督には素直に敬意を表する。
ただ星野監督は短期決戦に弱いという評価が定着しているようだ。ドラゴンズでの1988年と1999年、タイガースでの2003年といずれも日本シリーズには敗退している。
そして北京五輪でも金メダルどころか…。
クライマックスシリーズで采配を振るうのはもちろん初めてで、ライオンズを破ってファイナルステージに上がってきた、短期決戦では何をやらかすかわからない下克上のエキスパート、マリーンズ相手にどんな野球をするか注目したが、四試合でマリーンズをねじ伏せた。
ファイナルステージでは、レギュラーシーズン優勝によるアドバンテージと田中将大で実質二勝のアドバンテージがあるかに思えたが、拙blog10月19日付けエントリーパ・リーグのクライマックスシリーズの日程はこれでいいのか!? で指摘した通り、セ・リーグに比べてファーストステージとファイナルステージの間隔が一日長いパ・リーグは逆に言えば日本シリーズとの間隔が短いので不利だとも思えた。そこに来て雨天中止も一試合有り、もつれたら23日にはダブルヘッダー開催もあり得るという事態になった。
そんななか、王手をかけて迎えた21日の第4戦。辛島航を先発に立てた一方で、大エースの田中、新人王当確と思える則本昂大の二枚看板を揃ってベンチ入りさせた。王手をかけられたマリーンズが非常事態でエース級を総動員するというのなら理解出来るが、仮にこの第4戦に敗れたとしても、第5戦か第6戦で勝つか引き分けで日本シリーズに進出できるのだから、第5戦に田中、第6戦に則本をそれぞれ中四日で先発待機させる方がマリーンズの下克上を防ぐ意味でのリスク・マネージメントとしては正解だと敗戦処理。は思う。
だが、星野監督はそんなことは考えなかったようだ。もちろん劣勢の展開になったらこの二枚看板の無駄遣いは避けただろうが、5対5の同点から七回裏に勝ち越すと、八回に則本を投入した。この時点で、九回は田中で逃げ切る事も決めていただろう。
こういう投手起用はおそらく原辰徳も、野村克也も、森祇晶も、広岡達朗もやらないだろう。他にやるとしたら、長嶋茂雄が投手コーチ他の反対を無視してやるくらいだろう。
特に原監督は自分が選手として出場した1983年の日本シリーズで、3勝2敗で迎えた第6戦の九回表に逆転し、九回裏を抑えれば日本一という場面で、既にこのシリーズ二勝を挙げていた西本聖をつぎ込んだものの同点に追いつかれ、延長十回には江川卓をつぎ込んでサヨナラ負けを喫し、あげく第7戦で再び先発に立てた西本聖で逆転負けをし、広岡監督率いるライオンズの軍門に下ったことが鮮烈に頭に残っているだろうから。この時のジャイアンツの監督は原監督が師と仰ぐ藤田元司監督で、広岡監督は西本投入の場面を振り返って「藤田も最後に情が出たな」と語っていた。
則本、田中というリレーは上述した短期決戦の戦い方を熟知した監督なら逆にやらなかっただろうと思う。星野監督はもしもこの試合を引っ繰り返されていたら、第5戦は誰を先発させるつもりだったのだろう。誤解を恐れずに言えば、この試合に負けたら終わりという状況でありながら第5戦に成瀬善久、第6戦にセス・グライシンガーを残したマリーンズの伊東勤監督の方にも凄みを感じる。
さて、そんなゴールデンイーグルスとジャイアンツが日本シリーズで対戦する。
ジャイアンツファンの敗戦処理。としてはジャイアンツにとってはV9時代以来の二年連続日本一を祈っている。自称「球界の盟主」球団がたったの二年間連続日本一になるのに四十年も間隔が空くとはV9時代以降の日本プロ野球が群雄割拠の時代になったと言うことである意味喜ばしいのだが、ここは是非難敵ゴールデンイーグルスを倒してほしい。
ジャイアンツは2009年、2012年に日本シリーズを制して日本一に輝いていて、その双方とも敗戦処理。は現地で生観戦しているが、本音を言うと心の底から喜んだ訳ではない。それは同時に、日本一を逃す瞬間を生で見たことにもなるからだ。だが今年は幸か不幸かそんな心配はない。100%ジャイアンツを応援する。ジャイアンツにとってはクライマックスシリーズに続いて、ジャイアンツファン以外の野球ファンのほぼすべてが対戦チームを応援するという孤独な戦いが再びやってくるが、それはジャイアンツのいわば宿命と割り切って、ジャイアンツファン以外の野球ファンすべてを敵に回しても、日本一の座を勝ち取って欲しい!
もっとも、ジャイアンツとファイターズが対戦する日本シリーズの時にも書いたが、個人的には日本シリーズ出場はリーグ優勝チームへのご褒美だと考えているから、仮に日本シリーズに敗れることがあっても、その結果自体を責めることはしない。そのスタンスは贔屓チーム同士の日本シリーズ対戦であってもなくても変わらない。
クライマックスシリーズの導入で、日本シリーズの価値が云々という議論はあるが、いずれにしても長丁場のペナントレースを勝ち抜き、クライマックスシリーズも制したという事実は重要で、仮に日本シリーズで四連敗したとしても色褪せるものでは無いからだ。ジャイアンツファンの若い人の中には、“(リーグ優勝しても)CSを勝ち抜け、日本シリーズに勝って銀座でパレードするのがゴールです”とまるで“家に帰るまでが遠足です”みたいな言い方をする人がいるが、少なくとも敗戦処理。はそうではない。
とはいうものの、負けることを前提に闘う訳ではない。問題は田中攻略だ!
今季はジャイアンツも交流戦で二度田中と対戦し、2戦2敗。16イニングで長野久義の本塁打で奪った1点しか挙げていない。村田修一、阿部慎之助を中心に重量打線で田中攻略だ!…とは言いづらい。何とか2点取って、ジャイアンツの投手陣が1点に抑えて勝つくらいしかないだろう。そもそも村田は5打数0安打2三振、阿部は6打数0安打2三振…。田中と二度対戦してどちらか一回、出来れば最初の対戦で一矢を報いればゴールデンイーグルスの計算も狂うのではないか。
冒頭で日程云々と書いたが、結果的に21日に1イニングずつ投げた田中と則本は、田中が第1戦に中四日で、則本が第2戦に中五日で投げられる。ファイナルステージの第5戦、第6戦に先発していたら、日本シリーズ進出を果たしても先発ローテーションは無茶苦茶になっていたかもしれない。一見ハイリスクハイリターンに見えた第4戦の継投も、日本シリーズへの登板間隔をも考えた策だったのかもしれない。だとしたら星野監督にあっぱれだ。
ただ、うがった見方をすれば、則本や田中をつぎ込むくらいでないと接戦で継投になったら勝てないのではないかという見方も出来よう。唯一の黒星となった第2戦は同点の十回表につぎ込んだ金刃憲人以下のリリーフ陣がマリーンズ打線の餌食になった。斎藤隆も小山伸一郎も万全ではないのではと期待したい。
ジャイアンツとしてはおそらく内海哲也、菅野智之、杉内俊哉、デニス・ホールトンの順で第5戦以降は第1戦の先発投手が中四日で回るだろう。澤村拓一には先発投手を早めに降板させざるを得ない試合のリカバリーを期待したい。中継ぎ、抑え、さらには優勢の試合と劣勢の展開での役割分担も明確だ。相手に合わせるのでなく、ジャイアンツのスタイルでの野球を心がけて欲しい。
ちなみに標題の「楽天が巨人に勝つ日」 (田崎健太著、学研新書)はこの戦いを預言した書ではなく、サブタイトルに“―スポーツビジネス下克上―”とあるように、球界に新風を吹かせる楽天野球団を始め、いくつかの球団の新しいファンサービスの試みなどに触れた書である。「巨人」はジャイアンツの体質と言うより、旧態依然とした日本プロ野球の総称といったところだろうか…。
もちろん敗戦処理。は日本シリーズがこのタイトル通りの結果にならないことを祈るが、結果は神のみぞ知る…。
なお、直近十年間の日本シリーズの勝敗はパ・リーグのチームが勝ったのが七回で、セ・リーグのチームが勝ったのが三回。ただしその内の二回がジャイアンツ。ジャイアンツに期待できるが、パ・リーグのチームで敗れたのはいずれもファイターズ…。どうなることやら。
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