代打職人の末路「川藤の法則」!?~二岡智宏に戦力外通告
3日、ファイターズは二岡智宏に戦力外通告をしたことを発表した。2009年にジャイアンツから移籍してきた二岡は両足の故障もあって近年は代打専門になっていたが、昨年までの代打の切り札の面影が無く、今季は42打数3安打、打率にして.071と低迷。報道によると二岡はまだ今後に関して決めかねているようだが、年齢と今季の成績を考えると他球団が獲得に乗り出すかは難しいと敗戦処理。は感じている。
敗戦処理。の古い友人がかつて言っていた「川藤の法則」というものを思い出した。
(写真:もしも二岡智宏がこのまま二軍落ちのままユニフォームを脱ぐことになったら最後の実戦となった9月23日のイースタン・リーグのゴールデンイーグルス戦。先制タイムリーを放ち、代走と交代するシーン。 2013年9月撮影)
「川藤の法則」とはタイガースで川藤幸三が代打の切り札として活躍していた頃に敗戦処理。の友人がよく使っていたフレーズで、ベテランで勝負強い代打職人のその魅力の反面、ついて回る問題のことだ。
必ずしも川藤だけに当てはまる法則ではないのだが…。
わかりやすいように二岡智宏を例にしてあてはめると、チャンスに代打二岡が起用される。期待に応えて二岡が安打を放つと、足に不安のある二岡に代走が送られる。そして次の守備にはその代走で出た選手がそのまま守備で入るとは限らず、別の選手が入るかもしれない。この場合、代打を出される選手を別としても新たに三人の選手を使うことになる。二岡が代打本塁打を放ってくれれば問題ないのだが、二岡が出塁したら必ず代走が必要だ。一番手っ取り早いのは代打二岡起用によって引っ込められた選手と同じポジションの選手を出すことだが、その選手が代走として最適とは限らない。投手を多めにベンチに入れて、野手の人数を減らしているチームにはこれは痛し痒しな問題だ。その友人によると当時のタイガースにおける川藤の存在がそうだというのだ。
タイガースでは川藤以後もベテランで頼りになる代打の切り札が代々存在し、今季限りで引退する桧山進次郎までその系譜が受け継がれている。もちろんそのバットでの活躍には大満足で「代打の神様」なる過分なフレーズまで付くこともあるのだが、実際には監督やコーチは頭を悩ませる時もあるのだろうというのが友人の説。その友人によると、その点では関本賢太郎の方が「代打の神様」だそうだ。関本も失礼ながら年齢的な経時変化か、かつてほどにはオールラウンドに守備に付けるとは思えないが、打つだけでなく複数の内野を守れる存在だ。
そして川藤のような選手は驚異的な代打成功率を誇っているうちは良いのだが、代打成功率が低くなってくると、年齢的なこともあり、球団も次なる代打の切り札を求めるようになるとのこと…。
二岡がジャイアンツからファイターズにトレードされたのは2008年の終了後。
この年に発覚した山本モナとのゴシップと結びつけられて考えられがちだが、もちろんその影響もあろうが、実際にはこの年の故障続きで内野手としての将来に不安を球団が感じたことと、それまで守っていた遊撃のポジションに坂本勇人の当確で目途が付いたことも大きいと思われる。
1999年に入団して長嶋茂雄監督の大抜擢で川相昌弘から遊撃のポジションを与えられ、レギュラーポジションを獲得してからは順調な成績を残し、問題の2008年の前年の2007年も139試合に出場して打率.295、20本塁打、83打点と好成績を残していたが、2008年のキャンプで故障。オープン戦が始まっても一軍とは離れ、黙々と調整を続けていた。敗戦処理。は同じく別働隊で調整を続ける小笠原道大をジャイアンツ球場に観に行ったが、その小笠原よりはるかに遅れている二岡の姿に唖然としたものだった。
それでも突貫工事で開幕に間に合わせた二岡だったが、開幕戦で右ふくらはぎを肉離れして長期離脱。例の騒動はファームの試合で復帰し始めた時に起きた。ストレスが溜まっていたのだろうか…。
余談だが、勘違いしている人が意外にいるのではっきり書いているが二岡と千春夫人(用稲千春)は離婚していない(2013年10月4日現在)。
この年には終盤に右足首を捻挫して再び登録抹消。クライマックスシリーズ、日本シリーズではベンチ入りすら出来なかった。
ファイターズに移籍してからも両足の不安はぬぐいきれず、年々守備での出場が減った。2011年からは守備に付いていない。試合前のシートノックでも守備位置に付くのは滅多になく、一塁でシートノックを受けるのはチームに故障者が多発している緊急事態のみだった。
代打稼業は経験がものを言う、といわれるが二岡もまさにその境地で、2012年には54度の代打起用で48打数14安打1本塁打9打点、打率.292という好成績を残した。もっともほぼ同じ打数であったDHでの成績は42打数18安打1本塁打6打点、打率.429と代打での出場時を上回る。ただシーズン通しての得点が4で、本塁打数が2本と、本塁打以外での得点が2点しか無く、塁に出ても代走が起用される事が多いことを物語っている。
今年の不成績は極端ではあるが、ここまで成績が落ち込まなかったとしても、二岡には厳しいオフが待っていたかもしれない。タイガースの事情まではわからないが、ファイターズの野手の選手層を考えると、二岡のような選手の立場は…。
冒頭の写真は9月23日に行われた、今季のイースタン・リーグの本拠地最終戦での一コマ。「五番・DH」でスタメン出場した二岡だったが、一回裏の第一打席で投手の横をゴロで抜ける先制タイムリーを放つと、すぐに北篤が代走に送られた。これ以降、ファイターズのファームは横須賀スタジアムで三試合公式戦を行ったが二岡の出場はなかった。
このエントリーを書いている時点で、二岡は今後について意思を表明していないようだが、現役引退を決断した場合、本拠地最終戦でセレモニー的に出場機会を得るかもしれない。その際には前田智徳や宮本慎也のように、いやせめて1イニングでも良いからショートを守って欲しいものだがたぶんそれは難しいだろう。
その前田智も、いわば走れない代打職人だった。
引退セレモニーで「チームの足を引っ張って…」と語ったのは前田智なりに一人でプレーを完結できない(打っても代走を送られる)事へのジレンマだったのではないか…。
二岡にしても、正直、二岡を脅かす若手がファイターズに現れた訳ではなく、二岡が衰えただけだ。ファイターズとしても、来季ここ一番の場面で送れる代打がいる訳ではない。いや既に今季、二岡不在でファイターズは接戦を拾えない。鶴岡慎也が代打の切り札と言われている様では正直心許ない。そしてその鶴岡にFA流出の噂があるくらいだ。
せめてもの救いは、同じ戦力外通告であってもその二日前に通告された比較的若い選手らと一緒にされなかったことだ。このまま退団すればファイターズでの二岡は五年間のみであったが、二度の優勝に大きな足跡を残したといって差し支えないだろう。ありがとう二岡。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント