タイガースナインのパフォーマンス「グラティ」今季限り!?

どうでもいい話題と言ってしまえばそれまでだが、今季タイガースの選手が本塁打を打ってベンチに戻ってきた時に全員で指を立てて一斉にスタンドの方に向けるパフォーマンス、通称「グラティ」を今季限りにして来季はまた新たなパフォーマンスを考えようという動きがあるようだ。

今季新加入した西岡剛が、チームの重苦しい空気を変えるため、若手が育たないといった低迷する雰囲気を吹き飛ばすために選手が一体化出来るものが必要と、ベテランの関本賢太郎らと相談して開発したと言われているが、ファンや関係者の間で賛否両論という一面もあったようだ。


(写真：話題を呼んだタイガースのパフォーマンス「グラティ」 2013年6月撮影)

 

「そこは選手間でいろいろ考えながら話をしていけばいい。今年は今年でやって良かったなと思ってるし、来年は来年で」(11月27日付デイリースポーツ)言い出しっぺの西岡剛が26日に行われたプロ野球コンベンションに出席した際に語った。


確かにタイガースファンは、選手に本塁打が出てただでさえ気分が最高な時に、ナインが一斉にポーズを取ってさらにハイな気分になるだろう。ファンはそれでよいかもしれない。だがグラウンドで闘っている選手達にとっては相手への敬意に欠ける行為と映っても不思議ではない。

賛否両論の“否”の方は言うまでもなく一つ間違えれば相手への挑発となるからだ。折しもＯＢの「ミスタータイガース」掛布雅之が8月に「サンデーモーニング」(TBS系)に出演した際に、「プライドをかけて戦っている相手に対して尊敬の念が感じられない。ダメとは言わないが、やる場面を考えてほしい。相手を挑発する行為。米国だったら報復されますよ」 と発言して話題になったが、その掛布がＧＭ付き育成・打撃コーディネーターに就任。シーズン中も多くの時間を割いてチームに帯同する立場になった事で西岡もヤバイと思ったのではないか。

掛布は「米国だったら報復されますよ」と言っているが、西岡は昨年まで二年間とはいえそのアメリカでプレーしていた。報復の怖さを知らないはずはないだろう。ゴールデンイーグルスで定着した通称「バーン」もアメリカ帰りの松井稼頭央がナインに浸透させたと言われている。何とも解せない？

先日の日本シリーズでもピンチにホセ・ロペスを三振に仕留めた田中将大の雄叫びがロペスを挑発して刺激したのではないかと言われた。テレビ朝日系「報道ステーション」にゲスト出演したダルビッシュ有も「アメリカではやってはいけない」と語っていた。敗戦処理。は知らなかったのだが、大リーグには“メジャーリーグサービスタイム”という考え方があり、キャリアがより上の選手に対する敬意を忘れてはならないらしい。そして残念ながら日本で実績を残して海を渡ってきた日本人メジャーリーガーはいくら日本で実績を挙げていてもアメリカではルーキー扱いだという。

個人的には、例えば田中のような三振を奪った直後の雄叫びや、殊勲打を放った選手の塁上の雄叫び、塁間でのガッツポーズなどはある程度自然の感情とも言える。もちろんかつての神戸拓光のはしゃぎ過ぎながらのベース一周等は論外にしても、個人の性格にもよるが自然に出るものでもあろう。清原和博が投手の“雄叫び”について以前に「同じ雄叫びでもダルビッシュは自軍ベンチや外野の方を向いて吠えているからセーフだが、マー君はアウト」と言っていた。

清原の感覚がすべてだとは言わないが、ＴＰＯをわきまえろというのは一理も二理もあると思う(だが敗戦処理。がテレビで観た限りでは田中はロペスを三振に仕留めて三塁ベンチ方向を向いて雄叫びをした)。一投一打に集中している選手達の自然に出る延長線上のポーズにはそんなに目くじらを立てることもないのではと思う。ただ“メジャーリーグサービスタイム”日本流に言えば“体育会的タテ関係”は重視されなければならないだろうと思う。

そこまで考えた上で、西岡やタイガースナインが行う本塁打を打った後のベンチ前での行為はいわば、本塁打という、その瞬間からホームインまでボールデッドになる特別な時間の一部ではあるが、プレーと連動した感情表現とは一線を画するものだと思う。それ故にそれを不愉快と思う相手球団があるのならその思いを尊重すべきでタイガースナインは自重すべきだと思う。それは掛布が言った「米国だったら報復されますよ」とは無関係に個人的には“試合中にやるべきでない余計なこと”の範疇だと思う。

そして敗戦処理。が最も驚いたのはこの「グラティ」というパフォーマンスによって“選手、ファンの一体感が序盤の快進撃、若手が台頭出来る空気”が生み出されたされていることだ。もちろん他にもある要因の中の一つなのだろうが、このようなことをしないとタイガースというチームは選手が一体感を保てず、若手が実力を発揮出来ないチームだと言っているようなものだからだ。申し訳ないが、そういうものに依存したチーム力では長丁場のペナントレースで最後に頂点には立てないだろう。催眠術が切れたら終わりだろう。シーズン終盤の失速の一因が垣間見られた気がする。むしろ「ファンと一緒になって盛り上がるためのパフォーマンス」と言ってもらった方がまだ救いがある気がした。

「グラティ」に代わる新パフォーマンスが今一なものだったらタイガースは来季、再びＢクラスに低迷してしまうのだろうか<苦笑>!?

西岡は責任重大だ。