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2014年1月 1日 (水)

2014年は「マーロス」症候群!?

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あらためて皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。昨日の大晦日の夜はNHKの「紅白歌合戦」とTBSテレビの松井秀喜清原和博の出演企画をザッピングしながら観ていましたが、「あまちゃん紅白」と言われるくらいインパクトがありましたね。「潮騒のメモリー」潮騒のメモリーズから天野春子、鈴鹿ひろ美とリレーする演出は、昨年の日本シリーズ第
7戦の美馬学、則本昂大、田中将大のリレーを凌駕するインパクトがありました。また、主要メンバーのほとんどが生出演しての寸劇(ショートコント<!?>)にはほろりと来ました。

「あまちゃん」のセリフ「じぇじぇじぇ」は昨年の流行語大賞を受賞しましたが、もう一つこの番組関連で流行語大賞にエントリーした言葉で「あまロス」というのがありました。

番組終了後の昨年10月以降が「あまロス」なら、今年2014年には野球ファンに「マーロス」症候群が襲ってくる!?


(写真:ゴールデンイーグルスのお墨付きも得て、今季は大リーグでのプレーが濃厚の田中将大。連勝記録続行中のままの移籍で、もうこんな姿は日本では観られない!? 2011年9月撮影)



「あまロス」 とはNHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が昨年の
9月に終了し、同番組にたっぷり漬かっていた視聴者に訪れる番組終了後のぽっかりと空く虚脱感を喩えたもの。「あまロス症候群」という言葉も生まれた程。敗戦処理。もおそらく「おしん」以来約三十年ぶりにNHKの朝の連続テレビ小説にはまったので、それに近い感覚はあったと自覚している。

「あまちゃん」の見納めとなった2013年のNHK紅白歌合戦。特別審査員の中にゴールデンイーグルスの田中将大の姿があった。田中はおそらく、大リーグのチームに移籍するだろう。今季(年が変わったから来季とは書かないよ…)日本のプロ野球で田中の姿を見ることは出来ないだろう。制度は新しくなったとはいえ、日本のトップクラスの選手が大リーグに移籍するのはもはや珍しくないが、昨季240敗という圧倒的な存在感を示した田中がいなくなるというのはゴールデンイーグルスファンのみならず、大きな虚脱感を招くのではないか。

従来のポスティングシステムが失効していたり、結ばれそうになった新協定に選手会が「待った」をかけてみたり、そしてその間にMLB側が新協定案を一度取り下げたり、そして新たにMLB側が提案してきた新システムに対しては所属のゴールデンイーグルスが反対の立場を主張したりと、何かと田中の移籍に障壁が立ちはだかったが昨年末にゴールデンイーグルス球団がようやく田中の移籍を認める決断をし、現在は新システムに沿って田中が、条件に応じたMLB各球団と交渉を持つ段階になっている。

* と思ったら田中の不用意な“寄付”発言に関してMLBから警告が来たり…


この間、ファンやマスコミの論調はおおむね“田中本人が大リーグでプレーすることを望んでいるのだから、行かせて上げたい”という感覚のようで、移籍金の上限が安すぎるという反応を示した球団には「結局、金か!」という批判まで出た。敗戦処理。的には旧ポスティングシステムにせよ新システムにせよ広義の「金銭トレード」だと認識しているのだが、どうやらいつしか“楽天は田中の大リーグ挑戦を認めるべきだ”という暗黙の空気が形成されたようだ。

ファンは田中の流出に好意的なようだが、田中の抜けたゴールデンイーグルス、田中の抜けた日本プロ野球界はどうなるのだろうか?「あまロス」症候群ならぬ「マーロス」症候群が蔓延する事態になりはしないだろうか?

2013年の日本プロ野球の中心にいたのは田中とスワローズのウラディミール・バレンティンだ。ともに球史に残る金字塔を達成した。残念ながらスワローズはバレンティンの快挙とは裏腹に最下位に沈んでしまったが、田中はゴールデンイーグルスを球団創立9年目にして初のリーグ優勝、日本一に導く牽引車になった。土地柄、大震災からの復興を目指す人々の支えになった。その田中の流出は、これまでに日本からMLBに流出した一流選手、人気選手とは異なる趣の虚脱感をゴールデンイーグルスのファンのみならず、広く日本のプロ野球ファンにもたらすような気がしてならないのである。

もちろん田中がゴールデンイーグルスに残って昨年までと同じようにマウンドに上がったとしても、さすがに240敗の再現は難しいだろう(それをやり遂げて千代の富士貢の53連勝や双葉山貞次の69連勝に挑戦する姿も観てみたいが)。また、田中の移籍OKを決断したゴールデンイーグルスの立花陽三球団社長は田中が抜けても優勝を狙える目途が付いているというのも移籍容認の理由の一つと語っていたが、少なくとも昨年のような感動を再現させてくれるとは思えない。どちらにしても昨年に比べれば感動のトーンは下がるかもしれないが、田中本人が抜けるとしたら、そのギャップはさらに大きなものになるのではないか。

これはもちろん、田中を日本に、ゴールデンイーグルスに留まらせるべきと言いたいのではない。

田中に変わる“感動”を与える事を考えないとファンはどんどん離れていくと言うことだ。ダルビッシュ有が抜けたファイターズは吉川光夫の覚醒もあって翌年にリーグ優勝を果たしてチーム力を見せつけたが、観客動員はマイナスで球団にショックを与えた。ゴールデンイーグルスは、巷間報じられている通り、本心では
20億円相当では田中を移籍させたくないのだが、もはや引き留めるとイメージダウンの方が大きいとの判断で田中移籍を容認したのであれば、その田中移籍を推進した“世論”が「マー君大リーグに行けてよかったね…」の次に来る感情を考えなければならないのである。「やっぱり楽天はマー君がいなきゃダメか…。それより明日はマー君が投げるから早起きしてBSを観よう」と思われるようではダメなのだ。

もちろんこれはゴールデンイーグルスだけの問題ではない。

決定した新システムに反対したのはゴールデンイーグルス一球団だけだったと言うことは他の十一球団は(ジャイアンツは別としても)FA取得前に強く大リーグ入りを希望する選手が出てきたら金額次第では移籍を容認するという考えだと思って差し支えないだろう。

確かに、上限金額が設定されたとはいえ赤字に苦しむ球団にとっては魅力的なシステムかもしれない。だがゴールデンイーグルスが熟考したように入ってくる金額と本人が抜けるマイナス面は慎重に比較検討されるべきであろう。

「誰かが抜けても、別の誰かが出てくる」-そうでなければならないが、具体的な対策もなく甘い考えで、本来の移籍システムであるFA権取得前の選手の海外移籍を簡単に認めていては空洞化に拍車がかかる一方。たぶん「そんなことはわかっているんだけど」が移籍を容認する球団の本音かもしれない。だがファンまでも海外移籍に背中を押すようなら、“世論”を背景に選手会はさらなる海外FA権取得期間の短縮を主張しかねない。NPBはMLBからは見透かされ、選手会からは煽られと、さながら前門の虎、後門の狼ならぬ“前門のMLB、後門の選手会”という状況に陥りかねない。

さしあたって今年はマー君不在が引き起こす「マーロス」症候群がファンに空洞化の危機を認識させる一年になるかもしれない。日本よりレベルの高い野球をやる場所がある限り、選手の流出は避けられないとしても、その時期を早めさせることに機構や球団が荷担するのは如何なものかと思う。「誰かが抜けても、別の誰かが出てくる」選手育成システムの構築も不可欠だが、(上限も設定されてしまったことだし)極力FA権取得までは日本でプレーさせる環境を整えていかなければならないだろう。


新年早々悲観的なことを書いて恐縮だが、もちろん本音は今年も楽しく明るくプロ野球を観たいものである。ただ、野球の魅力を作るのは選手であり、そうである以上、トップレベルの選手にはなるべく日本でプレーしてもらって、そのうえで日本のプロ野球を卒業して大リーグでもどこでも行くならよいのだが、流れはそうではない。選手は一年でも早く大リーグに行くことを望み、ファンもそれを容認し、ルールまでその方向というのはちょっと待って欲しいというのが敗戦処理。の本音だ。

個人的には旧ポスティングシステムにしても新システムにしても大学卒、社会人経由などの選手で海外FA権取得時にはピークを過ぎかねない選手のための抜け穴というか救済措置だと認識していたが、赤字球団のための一攫千金の金銭トレードシステムになってしまった感がある。ダルビッシュや田中のように高校から入団して一年目から一軍で活躍する、最も若くしてFA権を取得出来る選手を早々と流出させるのは日本球界にとってマイナス面の方が大きいと思う。21世紀に入ってからの一番と二番と思える両投手が二人合わせても名球会に入る勝ち星にならないうちに日本球界から去っているのは日本球界からの卒業にしては早過ぎると思う。

ゴールデンイーグルスのファンや、東日本大震災で被害に遭って田中やゴールデンイーグルスに勇気づけられたと言っている人たちが背中を押し、所属球団も認めたのだから田中に関しては今季から大リーグで活躍してもらいたい。だが、これから続く大リーグ志向の有力選手も右に同じでは日本のプロ野球はどうなの?と言いたいのである。どこかで歯止めをかけるというのも必要だろう。


「マーロス」だけでなく、「マエケンロス」も「大谷ロス」も間近に迫っているのである。そうならないためには…


P.S.
しかしNHKも変わったものだ。かつて「連想ゲーム」という番組に当時人気アイドルだったシブがき隊の布川敏和が出演した時に司会のアナウンサーが「布川さんは、『フッくん』の愛称で親しまれています。この番組では『フッくん』と呼ばせていただきます」とわざわざ断っていて、そこまでしなければならないのか…と驚いたことがある。それからすれば、“北三陸駅”、“天野春子”、“鈴鹿ひろ美”などというテロップが画面に何の断りもなく出てくるようになったのだから。

 

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