キューバ代表のスラッガー外野手獲得の日に中井大介が特大弾でアピール。
ジャイアンツは19日、キューバ代表でWBCには三大会連続出場で通算6本塁打、打率.449を記録したスイッチヒッターの外野手、フレデリク・セペダ(34)の獲得を発表した。自国選手の海外進出を認めてこなかったキューバ政府が方針を転換してから日本球界への移籍は初めてのケース。
ジャイアンツの外国人選手は野手ではホセ・ロペスと新外国人選手のレスリー・アンダーソンが開幕から打棒好調。投手では「勝利の方程式」の一角を担うスコット・マシソンと、初登板で15奪三振と衝撃デビューを飾ったクリス・セドンがいて、一軍の四人の枠が埋まっていて、外国人選手間の競争も過熱することが予想される。
そしてその煽りを受けそうなのが、ファームから一軍を目指す選手、特に外野手。そんななか、2月の右肘痛から出遅れている中井大介がこの日に行われたホークスとのファーム交流戦で特大の本塁打を放ってアピールした。
(写真:ホークス相手のファーム交流戦でレフトに特大のソロ本塁打を放つ中井大介)
昨年は主に二塁手として成績を残し、オールスター後に打撃好調で定位置をつかみかけたが、守備で左膝靱帯損傷の大怪我をしてその後のシーズンを棒に振った中井大介が、オフに井端弘和、片岡治大と内野手の補強に成功したこともあって今季は外野にチャレンジしていたが、2月のキャンプ中の練習試合の試合前のシートノックで右肘を痛めた。イースタン・リーグが始まってDHで出場し始めたが、まだ守備には付いていない。スポーツ報知などの今日の朝刊スポーツ紙にあたかも決定の様に記事が出ていたから、インフルエンザ罹患で出遅れた我らの大田泰示と共に、フレデリク・セペダ獲得のニュースに焦りを覚えたことだろう。
◆巨人がセペダ獲得を発表、原監督「世界のスラッガーの一人」
今日のジャイアンツのファームは昨日からのファーム交流戦、対ホークス三連戦の二戦目。一軍同様交流戦も公式戦にカウントされるが、一軍と違って各球団一斉の開催ではない。昨日の初戦に5対9で敗れたジャイアンツは今日は一矢を報いたいところ。大田はこのところの定位置、「三番・センター」、中井はスタメンを外れてDHは石井義人が四番で入った。
先発はジャイアンツが阿南徹、ホークスがドラフト1位ルーキーの加治屋蓮。
一回裏、ジャイアンツは一死から大累進が左前安打で出ると、大田三振の後、石井が四球。二死一、二塁から横川史学の一、二塁間を襲う鋭い打球は飛びつくホークスの二塁手、金子圭輔のグラブを弾く先制タイムリー。
なお四球の石井には一回裏なのに一塁に歩いた時点で代走、中井が送られた。ベテラン選手の場合、二、三打席立って交代というのはよくあるが、さすがに一打席(それも四球)で交代というのは珍しい。一塁までは普通に歩いていったので故障とも考えにくい。ひょっとしたら東京ドームでナイトゲームで行われる一軍に合流するために一打席だけで試合から離れた(DHなので一打席は終えなければならない…)のかと現地で推測していたが、今日の公示を確認すると石井の一軍入りはなかった。
その中井は最初に回ってきた打席で冒頭の写真の様にレフトオーバーの豪快な本塁打を放った。二回に2点目を入れて迎えた三回裏、大田が痛烈ながらほぼ正面の遊ゴロに倒れた直後に加治屋から豪快に打ちはなった。これでジャイアンツは3対0。
ホークス打線の早打ちを丁寧に低めに集めることで内野ゴロの山を築いていたジャイアンツ先発の阿南はその直後の四回表に昨年、一軍でも左投手対策に重用された李杜軒に右中間に滞空時間の長い本塁打を放り込まれるが、この回以外は走者を得点圏に進めさせない好投。
七回表に二死から金子に四球、山下斐紹に左前安打で初めてピンチらしいピンチを招くが、真砂勇介を見逃し三振に仕留めてピンチを切り抜ける。
その間にジャイアンツ打線は六回裏に横川が右中間にソロ本塁打を放って4対1と点差を拡げた。
この回になおも一死一、三塁として加治屋をKOするが、代わった二番手の育成選手のサウスポー飯田優也に対し仕掛けたエンドランが小飛球で併殺となり1点止まりだった。
阿南は八回表のマウンドにも上がったが、先頭の多摩大聖ヶ丘高出身でおそらく今日の両チームの中で最も出身高校がジャイアンツ球場に近い福田秀平を遊ゴロに打ち取ったところで田原誠次に交代。投球数を確認していないが、本塁打を含む二安打を喫している李杜軒から続く右打線を迎えて予定通りの継投という感じだ。
試合は九回にマウンドに上がった土田瑞起が一死から三振に仕留めた塚田正義に振り逃げで一塁に出られると牧原大成、金子に連打を浴びてあっという間に一死満塁のピンチを招くが山下を三振、真砂の代打、育成選手の亀澤恭平を遊ゴロに仕留めて何とか逃げ切った。
【19日・ジャイアンツ球場】
H 000 100 000 =1
G 111 001 00× =4
H)●加治屋、飯田、巽-山下
G)○阿南、田原誠、S土田-加藤
本塁打)中井1号ソロ(加治屋・三回)、李杜軒3号ソロ(阿南・四回)、横川5号ソロ(加治屋・六回)
入場者数1,090人。
ホークスの先発、ドラフト1位の加治屋にはホークスファンの期待も大きいと思うが、敗戦処理。が今日初めて観た感じでは迫力というか、威圧感に欠ける感じだった。
昨年ウエスタン・リーグのホークス戦を観たときには前年のドラフト1位、東浜巨が登板して結果的にその試合の後に一軍に上がってスイスイと白星を積み重ねたが、今日の加治屋には昨年の東浜のようなモノを感じ得なかった…。
ジャイアンツとホークスはともに多くの育成選手を抱える大所帯。ジャイアンツは清武英利前球団代表兼GMの失脚後、“第二の二軍”と言うシステムを事実上解体し、あくまで二軍を多人数にしているが、ホークスは二軍の下の“三軍”という位置づけで二軍とは別働隊で独立リーグやアマのチームと練習試合をがんがん行っていて、同じ大所帯でも異なるアプローチで選手を育成している。どちらの選手も自分との戦いや目の前にいるライバル達との競争以外に“チーム方針による大補強”という壁が立ちはだかる。ホークスでは今日フルにマスクをかぶった山下などは鶴岡慎也の獲得がなかったら一軍で勉強していたかもしれない。
また「三番・DH」でスタメン出場した吉村裕基にはイースタン・リーグ観戦の常連のジャイアンツファンからは「懐かしいなぁ…」とどよめきを起こしていた。
二ゴロ併殺打、遊ゴロ、中飛と良いところを見せられず、第四打席にはバーバロ・カニザレスを代打に送られていた。カニザレスはウエスタンでは打率三割を超えているが、今日は田原誠に頭の近くに投げられて調子を狂わされたか、止めたバットに当たる投ゴロで体勢を崩すと諦めて一塁に全く走らずにアウトになってスタンドのジャイアンツファンの失笑を買っていた…。
(写真:止めたバットにボールが当たってしまって体勢を崩すバーバロ・カニザレス。自打球を当てた訳ではない。)
このカニザレスも、ホークスの国内外国人選手総取りで新外国人ながら外国人枠から漏れている。前ファイターズのブライアン・ウルフ、前タイガースで出戻りのジェイソン・スタンリッジ、前カープのデニス・サファテ、前バファローズのイ・デホだけで一軍の外国人枠が埋まるのである。さらに昨年からいるポール・オゼゲラとエディソン・バリオスがいるのだから、ジャイアンツのセペダ獲得なんて可愛いものである。ならばカニザレスはじっくり日本で育てていく方針なのかと思ったら既に34歳!
そのカニザレスに、試合前の打撃練習で「ヘイ、カニ!ネクスト、ジャパニーズカーブ、OK!?」と流ちょうなジャパニーズイングリッシュで打撃指導していたのが昨年までジャイアンツの育成コーチだった、現ホークス二軍打撃コーチの大道典嘉。
もちろん元々は南海ホークスの選手としては最後まで現役を続けた選手。帰るべき所に帰ったという感じだが、ホークスのファームにはジャイアンツと縁のある人が多い。
二軍監督が近鉄バファローズからトレードでジャイアンツに来た石渡茂。
今日はスクイズのサインを出す場面がなかったのが残念…。他に井出竜也外野守備走塁コーチ、吉田修司投手コーチもジャイアンツ出身。
ジャイアンツに話を戻そう。
中井は本塁打を放ったが、その後の打席は右邪飛と三振、大田に至っては三振、遊ゴロ、三振、四球。外野と一塁を兼務する横川は先制打と追加点の本塁打でこの試合のヒーロー的存在だったが、やはり右肘の回復待ちという条件付きながら、中井が一番一軍に近い存在なのだろう。もちろんセペダ入団で外国人枠から外れるのが投手のセドンだったりすると、今日好投した阿南にもチャンスは巡ってくるのだから外国人の人数オーバーで泣く人もいれば笑う人も出ることになる。セペダに関しては(来日の可否などを含めると)かなり入念な下調べをしたと思うが、どうせなら金属疲労が顕在化した“スコット鉄太朗”に割って入るような投手、出来れば左投手を獲得して欲しかったものだが…。
そして、枠…があるのかどうかは定かではないが、球団創立80周年を記念したおじいちゃんジャビットの登場と共に東京ドームで姿を見かけなくなった背番号555のジャバが今日はジャイアンツ球場に現れた。
二軍落ちしたのだろうか、今日はスタンドでファンサービスをしていた。それにしても、このフリーなサービス時に椅子に座ってのサインとは態度が横柄…。こんなマスコット、前にも一人いたが、そういえば背番号1105のイトコは何処へ!?
バットを杖代わりにするジジージャビットといい、ファンを立たせて自分は座ったままサインをするイトコ、もといジャバといい、このチームのマスコット戦力はいただけない。チームは創立80周年の老舗だがファンサービスは老舗どころか発展途上と言わざるを得ないのが残念だ…。
マスコットも選手の補強も、競争を過当にすればレベルアップに結びつくとは必ずしも限らないと思う。それならば足りないところを補う文字通りの“補強”を考えた方がコストパフォーマンス的にも良いはずだ。だが何らかの事情で「今年は何が何でも優勝しなければならない」という強迫観念に襲われると、往々にしてとにかく資金力を尽くして足し算するしか見えなくなっていくのだろうか…。
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