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2015年2月16日 (月)

大久保博元ゴールデンイーグルス監督の松井裕樹リリーフ起用構想

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日の日刊スポーツによると、ゴールデンイーグルスの大久保博元新監督が二年目の松井裕樹を先発ローテーションでなくリリーフで起用する構想を持っているという。前カープのキャム・ミコライオを獲得して守護神が固まったかと思いきや、松井裕、さらには日本一になった2013年にチーム最多セーブを挙げた青山浩二らで守護神の座を競わせる模様。


個人的には昨年カープで25セーブを挙げ、来日三年間で3年連続20セーブ以上、計73セーブのミコライオに一日の長があると見ているが、松井裕が仮にミコライオの前の八回1イニングを抑えるセットアッパーとして定着したら、ライバル球団には脅威の継投になりそうだ。


(写真:大久保博元新監督の構想で今季はリリーフに回る見込みの二年目の松井裕樹2014年5月撮影)



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敗戦処理。は拙
blog29日付こんなオーダーが観たい!2015年パ・リーグ篇 のゴールデンイーグルスの項で言及したように森雄大、松井裕樹、安楽智大による先発三本柱の確立を願望(恐れている<!?>)身であるが、松井裕が試合終盤に回り、キャム・ミコライオと共に「勝利の方程式」を確立させたら、ファイターズはもちろん、ライバル球団にとっては脅威になるに違いない。


そもそもゴールデンイーグルスの大久保博元新監督は先発ローテーションを5人の投手で組み、登板間隔が短くなる分はイニング数を短くても良しとし、小刻みな継投で逃げ切るという試合運びをしたい構想を持っているそうだ。そしてなおかつ、フル回転が予想されるリリーフ陣にも、特定の投手に登板が集中して登板過多にならないよう、ブルペン待機の投手を増員したり、一、二軍の入れ替えを頻繁にする考えもあるという。


確かに近年、ほとんどのチームが僅差の最終回を託す守護神を固定するだけでなく、その守護神につなぐまでの七回、八回を託すセットアッパーも固定している。「勝利の方程式」というフレーズはジャイアンツの長嶋茂雄監督が1994年に確立した、リードしたら終盤を橋本清(8)→石毛博史(9)とつなぐ継投に名付けたのが最初だが、今ではどの球団でも「勝利の方程式」の確立に躍起である。だが、先発投手が中六日以上の感覚で登板、投球数100球程度の球数制限という形で「保護」される一方で、リリーフ起用される投手達は勝ち目のある展開となると見境なく起用される傾向が多いのが実態である。大久保監督には選手に過度にきつい指導をするイメージ(指導をした過去)があるが、リリーフ投手にも登板過多にならないよう配慮するのであれば、お手並み拝見と行きたい。


リリーフ投手の登板過多を避けた起用法と言えば、1998年に横浜ベイスターズを38年ぶりのリーグ優勝、日本一に導いた権藤博監督の起用法が思い出される。


この年のベイスターズには佐々木主浩という絶対的守護神がいて、打線も鈴木尚典、ロバート・ローズら破壊力抜群の「マシンガン打線」が機能したが、権藤監督は佐々木の力を最大限に引き出すために佐々木の起用をリードした最終回1イニングに極力限定し、先発投手から佐々木につなぐまでの間に挟む中継ぎ投手にも特定の投手に負担がかからないよう、「中継ぎ投手のローテーション化」を打ち出した。中継ぎ投手を多くベンチ入りさせていた。1998年のベイスターズの投手のリリーフでの登板数を見てみよう。


1998年横浜ベイスターズ 136試合79561引き分け、勝率.585
50試合以上登板 島田直也(54)横山道哉(53)佐々木主浩(51)
40試合以上登板 阿波野秀幸(49)関口伊織(42)五十嵐英樹(40)
30試合以上登板 河原隆一(30)

※ ()内はリリーフでの登板数。


確かに、特定の投手が突出した登板数にはなっていない。


比較対象として、近年では「勝利の方程式」が確立されて奏功したと思える、2013年のジャイアンツを挙げてみる。「スコット鉄太朗」の異名が付いた、スコット・マシソン、山口鉄也、西村健太朗からなる継投が盤石で、六回を終えてリードしていた試合に年間で3敗しかしなかったことがその精度の高さの証明ともなった。


○2
013年読売ジャイアンツ 144試合84537引き分け、勝率.613
70試合以上登板 西村健太朗(71)
60試合以上登板 山口鉄也(64)スコット・マシソン(63)
50試合以上登板
40試合以上登板 高木京介(46)
30試合以上登板 青木高広(34)


守護神の西村がリーグ最多の42セーブを挙げてチーム最多登板。42ホールドポイントで揃ってリーグ最多HPとなった山口とマシソンが共に60試合以上の登板と、突出している。「スコット鉄太朗」のこれだけの登板機会を確保した先発投手陣の踏ん張りと打線の援護があってこそなのだが、これだけ登板過多だと、三人とも2014年に成績を落としたのも無理もないと同情したくなる。


権藤監督はこういう事態を避けるために先発投手だけでなくリリーフ投手にもローテーション制を打ち出したのだろう。だがこれを実行するのはたやすいことではない。


リリーフ投手を豊富にベンチ入りさせたくても、一軍に登録できる人数も、1試合にベンチ入り出来る人数も決まっている。リリーフ投手を多くベンチ入りさせると、その分野手を減らさなければならない。野手のベンチ入り人数を減らすということは交代要員を減らすということだ。ベイスターズの1998年のレギュラー野手を振り返ろう。


()石井琢朗
()
波留敏夫
()
鈴木尚典
()
ローズ
()
駒田徳広
()
佐伯貴弘
()
進藤達哉
()谷繁元信



まずスターティングメンバーが固定できた。せいぜい、相手先発投手の右左によって、佐伯貴弘のところに中根仁が入るくらいだった。実際上記8人のうち、佐伯を除く7人がこの年の規定打席に達している。さらにこのメンバー、守備固めを必要としているのが佐伯くらいでその場合も中根が入る。強いていえばレフトを守った鈴木尚も守備に難があったが、守備固めを必要とするほどではなかった。内野の4人と捕手の谷繁元信がこの年のゴールデングラブ賞を受賞した。代打要員も投手の打順以外では必要なく、打力の劣る谷繁は捕手だけに安直に代打を送れない。代走も最小限で済む。上記8人プラス佐伯以外の野手で、40試合以上出場したのは代打要員の井上純71試合、荒井幸雄50試合を始め、畠山準49試合、万永貴司47試合、川端一彰43試合がいたが、一つの守備位置に30試合以上出た控え選手はいなかった。


つまり、ここから仮説を立てるとすると、特定のリリーフ投手に負担をかけないために多くのリリーフ投手を用意するためには野手を固定、限定できる布陣であることが必要になる(だから、権藤監督の理にかなった投手起用法をその後誰も実践していない<!?>)。


ではゴールデンイーグルスはどうだろうか?


週刊ベースボール221日増刊号(選手名鑑号)に出ていた開幕予想オーダーを挙げてみる。


()岡島豪郎
()
藤田一也
()
銀次
()
サンチェス
()
ウィーラー
()
松井稼頭央
()
西田哲朗
()
嶋基宏
()聖澤諒



スイッチヒッターの松井稼頭央を別としても左打者が4人いるが、リーグ優勝、日本一を達成した2013年にもレギュラーだった岡島豪郎、藤田一也、銀次、聖澤諒4人の左打者は相手先発投手が左投手であってもスタメンを外されるレベルではなかった。ということは、2人の新外国人助っ人が未知数ではあるものの、野手の限定化の期待が持てるメンバーだ。遊撃手から外野にコンバートされた松井稼の今年40歳になる年齢的な不安と、新たに遊撃手となる西田哲朗がまだ一年間フル出場したことがないのが不安ではあるが、いわゆる猫の目打線にはならないで済みそうなメンバーがいるのは心強い。


もちろん、これらの仮説はセットアッパーになる松井裕がセットアッパーの重責を全う出来るという前提での勝算であり、誰もが認める大器ではあっても向き不向きというものはあり、松井裕が勝利の方程式にぴったりはまるかはまだ何とも言えまい。また、当たり前のことであるが、継投策とは投手をつぎ込めばつぎ込むほど、その中に一人でも調子の悪い投手がいれば、勝てそうな試合が台無しになる危険をはらんでいるのである。だから多くのチームは先発投手に登板間隔を空けてあげて好投を期待し、勝利の方程式を担う計算の出来る少ないリリーフ投手で逃げ切る野球をするのである。


大久保監督が掲げたスローガンは「一致団結」だという。全員で目標に向かって一致団結しようということだろう。もちろん、チーム全員の力が結集されないと優勝という結果は見えてこないが、敗戦処理。の仮説が当たっているとしたら、全員の中から選ばれた限定されたメンバーの力でまかなうことが出来ない限り、ゴールデンイーグルスで大久保監督の目指す野球での成果は生まれてこないのかもしれない。

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コメント

哲様、コメントをありがとうございます。

> 確かにリリーフ投手を多くベンチに入れるには野手を減らすしかなく野手を減らせる陣容というのは皆それなりに走攻守が揃っている必要がある・・・

一見合理的な権藤方式をその後どの球団、どの監督も真似しようとしないのは、真似しようにも出来ないからだろうというのが私の仮説です。

正直、ゴールデンイーグルスはひいき球団ではないので、選手の布陣とかあまり把握してないのですが、リーグ優勝、日本一を成し遂げた2013年に相手先発投手の右左に関係なくスタメンを固定出来たので、権藤ベイスターズを思い出しました。

投稿: 敗戦処理。 | 2015年2月17日 (火) 22時04分

これは面白いですね!
なるほど確かにリリーフ投手を多くベンチに入れるには野手を減らすしかなく野手を減らせる陣容というのは皆それなりに走攻守が揃っている必要がある・・・
何度も頷きながら読みました!

投稿: | 2015年2月16日 (月) 12時21分

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