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2015年7月 4日 (土)

松井裕樹だって、いつかは負ける…

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今季、入団二年目で開幕からクローザーに抜擢され、見事にその役目を全うしているゴールデンイーグルスの松井裕樹に、ついにクローザーとしての初黒星がついた。



4日のファイターズ戦、2対2の同点で迎えた九回表にマウンドに上がった松井裕は2イニング目となる十回表に二死二塁のピンチを招くと、田中賢介に左翼線に決勝タイムリーとなる三塁打を打たれた。予め前進守備を敷いていたレフトの牧田明久がダイビングやっちを試みるも届かないレフト線いっぱいに打球は落ちた。前日まで30試合に登板して1018セーブ、防御率0.50と無敗を誇り、オールスターゲームにも救援投手部門にファン投票で選出された松井裕が、31試合目の登板で初黒星となってしまった。


(写真:今季31試合目の登板で、初めて敗戦投手となったゴールデンイーグルスのクローザー、松井裕樹。 2014年5月撮影)



今季からゴールデンイーグルスのクローザーに抜擢された入団二年目の松井裕樹は、シーズン無敗と、シーズン防御率
0.00を秘かに目標にしていたという。二年前の田中将大だって、途中までは誰一人として、シーズンを240敗と無敗で終えるとは想像しなかっただろう。高い目標を掲げてそのための努力を積み重ねることは悪いことではないと思う。実際、シーズン当初は防御率0.00も続いていたし、リリーフに失敗して黒星がつくこともなかった。


だが、今日(4)の十回表に、内野安打とラインぎりぎりの不運な安打とはいえそれが失点となり、決勝点となったために松井裕に今季初黒星がついた。


普通に考えれば、松井裕に限らず、誰でもいつかは失敗する。いつかは敗戦投手になる。それは、長くクローザーとして活躍するためには誰でもが経験する、壁のようなものなのだろう。


過去、成功したクローザーが語る共通項として、抑え投手が失敗すると、勝利投手の権利を持っていた投手の権利をフイにしてしまうことが多いが、そんなことを一々気にしていたら、クローザーは務まらないという。性格にもよるが、その投手やチームメートに謝らないクローザーもいるという。


例えば、江夏豊が抑えに転身したのはホークス時代だが、まだ転向する前に、当時のホークスで抑え投手を務めていた佐藤道郎が、三試合連続でリリーフに失敗したのに、その翌日も普通に明るく球場に姿を現したのを見て江夏は最初「この人は何を考えているのか?それとも何も考えていないのか!」と不思議に思ったそうだが、自分が抑えに回るようになって、佐藤の気持ちがわかったという。


ジャイアンツで球団最多セーブの記録を持つ角三男も同様に割り切った気持ちの持ち主だったそうだが、チームの先輩である加藤初の通算100勝がかかった試合で、加藤がスタンドに家族を呼んでいた状況でリリーフしてリードを守れず、同点にしてしまって加藤の通算100勝目をフイにしてしまった時はさすがに申し訳なく思い、加藤本人に頭を下げたという。バツの悪いことに、角が同点にされた直後の九回裏に中畑清にサヨナラ本塁打が出て角が勝利投手になってしまったという


松井裕のように若くしてクローザーに抜擢された投手は、それこそ怖いもの知らずで、当初は連続セーブを挙げたり、困難なピンチでも凌いでチームに勝ち星を呼び込んでいくが、ひとたびリリーフに失敗して先輩投手の勝ち星を奪ったりすると、そこで事の重大さに目覚め、それから大胆な勝負が出来にくくなってクローザーとしての本領を発揮出来なくなることがあるという。


敗戦処理。は(クローザーに対してだけではないが)よく「三年やって一人前」という表現を好んで用いるが、そういう失敗を何度か経て、先輩の勝ち星を奪う罪悪感から逃れられるようになり、たまに失敗することがあってもそれを次の登板に引きずらない様になってこそ、クローザーも本当の意味で一人前なのだろう。


その意味では、今日の松井裕は誰か先輩投手の勝ち星を失わせた訳ではない。同点の場面でマウンドに上がり、あのまま2イニングを無失点で終えていたとしても引き分けで終わった可能性もある。初黒星の付き方としては、後に残らない、語弊はあるかもしれないがベターな負け方だったのではないか。


むしろ、敗戦処理。としては今日は松井裕がどうこうというより、大久保博元監督の起用法に疑問が残った。


松井裕は昨日(3日)東京ドームで行われたこのカード、年に一度の「楽天デー」と銘打たれた試合で3点ビハインドの九回表に登板し、14球を投じて1イニングを無失点に抑えた。


普通に考えたら、3点ビハインドの九回表にクローザーを登板させるなどという起用法をすることはまずはない。推測だが、この試合が「楽天デー」という年に一度の、球団の親会社楽天の社員のための福利厚生的な位置づけの試合であり、トップである三木谷浩史オーナーをはじめ、本社社員が多数詰めかけたいわば御前試合。負けるにしても最後まで諦めない姿勢を示すとともに、松井裕を披露したいという、大久保監督の発想の賜だろう。


そして翌日の今日、移動日なく連戦となった試合で、同点の九回表に投入。この日絶好調の五番打者近藤健介からの打線を三者連続三振に抑えた。これで打線が松井裕の好投に触発されてサヨナラ勝ちすれば何の問題もなかったのだが、ファイターズのクローザーでもない鍵谷陽平に九回裏を抑えられて延長戦へ。松井裕は続投した。延長戦は最長で十二回まで考えられるが、おそらくはこの回までは松井裕という考え方だったのだろう。


ビハインドの試合で‶顔見せ″で1イニング投げて移動日無しで翌日に、勝つという保証もないのにクローザーを2イニング投げさせるべきなのだろうか?ましてや、明日はナイトゲームの後のデーゲーム。ここはこのイニングを無失点に抑える確率が下がろうとも、松井裕を降板させるべきではなかったのか。


ここから先は敗戦処理。の個人的な野球観なのだが、例えば今日のゴールデンイーグルスの場合は同点で九回表を迎えた時点で、延長の最大である十二回までの4イニングを考えて継投を考える場合に、ホームチームだからクローザーを先に出すことは賛成だが、同点の1イニングを託せる投手がクローザーの松井裕を含めて福山博之、ライナー・クルーズの三人だとしたら、三人で4イニングということは誰かに2イニング託さなければならない。大久保監督は三人の中で最も信頼の置ける松井裕に2イニングを託したが、クローザーというものは、「今日2イニング投げたから明日はお休み」ではダメなのだ。ましてや2イニングを完璧に抑えたとしても、チームが勝つとは限らないのだ。それならまだ、リードしている試合に八回の頭から2イニング投げさせる方が、抑えれば勝つのだからよほど理にかなっている。今日のような時には言葉は悪いが、三人の内の誰かを犠牲にしなければならないのだとしたら、真っ先に守らなければならないのはクローザーである松井裕であるというのが敗戦処理。の野球観だ。


もちろん、ゴールデンイーグルスが7連敗中という特殊な事情はあったろうが、こんな起用法をしていて、松井裕が故障せずに一年間を乗り切れるのだろうかとゴールデンイーグルスのファンでもない敗戦処理。でも心配してしまう。


もちろん、ここに書いた心配事が杞憂に終わり、明日、何事もなかったように松井裕がファイターズ打線を相手にセーブをあげるというオチが待っている可能性もあるのだが

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