NPBでは来季から従来の外国人枠とは別にアジア出身選手を別枠にするアジア枠の導入を目指しているそうで、過去に反対された台湾や韓国に説得行脚に出向く準備もしているという。旗振り役はジャイアンツの清武英利球団代表。まさか自球団のイ・スンヨプや姜建銘を別枠にしてさらに外国人助っ人を補強しようと言う算段ではないだろうが、敗戦処理。は後述するがアジア枠にはどうも賛成出来ない。そしてそれよりも先に、近年目立ってきた外国人選手が契約更改時に球団と金銭面で折り合わず、より条件がよい球団への移籍を好きなようにさせ放題にしている現状に規制を加える方が先ではないか?と考えている。
まずアジア枠に関してだが、現時点でNPBが導入しようとしている具体的な案を把握出来ていないのだが、敗戦処理。としては日本プロ野球界として韓国や台湾のプロ野球から有力選手を獲得することにあまり賛成でないのである。何故ならばそれは日本のプロ野球から有力選手が次々とアメリカ大リーグにわたり、日本プロ野球界の空洞化が懸念されているのと同じ現象を韓国や台湾のプロ野球リーグに起こさせるおそれがあるからで、アジア枠以前の問題なのである。このオフもドラゴンズが韓国プロ野球で首位打者1回、最多安打4回の実績を残している「韓国のイチロー」こと李鐘範、じゃなかった李炳圭(イ・ビョンギュ)を獲得したり、マリーンズが台湾球界から今年のアジアシリーズにも出場したLa New ベアーズの左のエース、呉偲佑(ウ・スヨ)を獲得しているようだが、外国人助っ人が必要ならばアメリカ大リーグやそのマイナー、あるいは独立リーグから探してくればよいだけで、日本と比べると後発である韓国や台湾で育った選手を獲得するのは日本プロ野球がアジアという地域の中で一人勝ちするには好都合だが、アジアにおけるプロ野球リーグの発展という前提で考えると、甚だ疑問である。ましてやFAやポスティングで日本の有力選手がアメリカ大リ-グに流出する分をアジア圏の選手で少しでも埋めようと考えているなら方向転換をして欲しい。アメリカ球界にやられたことを、後発の韓国や台湾にやり返すのは筋違い。やり返すならアメリカ大リーグでしょう。それに韓国や台湾プロ野球の有力選手を日本に引き抜いておいて、アジアシリーズで日本シリーズ優勝チームが勝ち続けても何も意味がないし。
野球というスポーツは残念ながらグローバル化しているとは言い切れない。1992年のバルセロナ五輪で初めて野球が公式種目となってからの4度の大会で、最も高いレベルのプロリーグであるアメリカ大リーグの選手は一度も出場していない。今年初めて国別対抗の世界選手権と言えるワールド・ベースボール・クラシックが開催されたが既に書いた通りアメリカの、アメリカによる、アメリカのための大会であっただけで真の国際大会と呼べるようになるには課題を残していることは明らかだ。さらにそのアメリカ大リーグは日本プロ野球界のフリーエージェント制度など無関係に成立するポスティングシステムによって日本の選手を獲得出来ることになっている。こうしたいびつなアメリカ主導型の体質を変えて行くにはアジアの野球界が力を付けていくしかないのであるが、現状日本プロ野球界が導入を目指しているアジア枠は、どうもアジア野球界全体の発展に結びついていくとは考えにくい。今現在日本プロ野球界に所属しているアジア出身選手にお引き取り願えとまでは言わないが、今後の獲得は慎重を期して欲しい。そして金に物を言わせてフリーエージェント取得前の選手を獲得出来るポスティングシステムは一日も早く廃止し、アメリカ大リーグの球団が日本人選手を欲しければフリーエージェント取得を待ってもらえば良いだけである。もちろん獲得の際は補償金を置いていってもらう。ポスティングでの費用よりは安くすむだろうから、大リーグ側にとっても悪い話ではないはずだ。
そして、敗戦処理。に言わせれば日本プロ野球界として外国人選手に関して最優先で対策を講じなければならないのが昨今見られがちな、所属球団と契約でこじれた外国人選手がよりよい条件の他球団に移籍し放題という現象だ。
このオフも11月末に各球団が提出する契約保留選手(次年度の選手契約締結を前提とする選手)に載せたくても載せられない-この段階で契約がまとまらずに便宜上自由契約になっているのがフリオ・ズレータ、リック・ガトームソン、フェルナンド・セギノール、ライアン・グリンらで、スワローズとこじれたガトームソンは既にホークス入りが決まっている。そして今日(21日)のニュースではゴールデンイーグルスとこじれたグリンをファイターズが獲得した。
日本の球団は外国人選手と契約を結ぶ際に単年契約だろうと複数年契約だろうと契約終了時にはあらためて新規に契約を結ぶような形を取り、そこでこじれたら自由契約選手となって、フリーにどの球団とも交渉出来、その結果資金力に余裕のある球団に良い外国人選手が集まるというのが近年のありがちなパターン。最も顕著なのがジャイアンツで、自前で探してきて活躍した外国人選手はバルビーノ・ガルベスを最後で、それ以降はスカばかり。その後ライオンズから戦力外通告を受けたドミンゴ・マルティネスや、タイガースで監督批判をして退団した形のダレル・メイが活躍すると味を占め、ロベルト・ペタジーニ、タフィ・ローズ、ジェルミー・パウエル、李承燁(イ・スンヨプ)といった面々を前所属球団との契約のもつれに乗じて獲得している。
そしてその真逆がカープで、近年アンディ・シーツ、グレッグ・ラロッカ、トム・デイビーが流出している。
日本人選手ならFA権を取得するまで不可能な、よりよい条件の球団に移るという行為が外国人選手には容易に可能になってしまう制度はおかしい。だいぶ骨抜きになったとはいえドラフト制度で戦力の均衡を考え、国内球団間でのFA移籍には人的補償か金銭補償が伴い見返りを必要にしているように、協約で一定限度戦力の偏りを防ぐ措置を講じている中で何故に外国人選手を野放しにしているのか。
仮にFA権を持たない日本人選手が自分の意思で移籍をするには、所属球団から自由契約にしてもらわなければならない。あるいは球団からトレードされた形にしてもらうしかない。球団がどうしても認めたくなければ、最終的にはその選手は任意引退選手となり、元の所属球団の同意無しで元の所属球団以外に入団することが出来なくなる。外国人選手にもそうは出来ないのか?
現実には任意引退選手として公示される選手というのは現役を引退してその球団のコーチになるとか、スタッフとして球団に残るケースが大半である。強制的に任意引退選手にすることに無理があるのであるにしても、何らかの形で制約を加えるべきと言うのが敗戦処理。の考えである。ただ、残念ながら具体的にこういう規制を設ければ良いという案を考えるところまでには至っていないが。
もはやジャイアンツなどは確信犯的にこの方法での外国人選手獲得に力を入れているとしか思えない。何でも一律に、公平にという考え方には反対することの多い敗戦処理。であるが、あまりにも多い外国人選手の日本球団間移籍には警鐘を鳴らしたい。そして蛇足ながらジャイアンツに対してはせっかくスワローズで敏腕を発揮した中島国章氏を引き抜いたのだから、これからは真っ当な調査による外国人獲得で、かつてのウオーレン・クロマティのような優良助っ人を探してきて欲しいものだ。
野球のグローバル化のためにはアメリカ大リーグに好き放題させていては限界がある。日本を筆頭にアジア勢がアメリカのライバル勢力になって発言権を増すことが重要である。そしてその一方で助っ人外国人選手に移籍をさせ放題にしている現状に歯止めをかける。日本の野球界が問題視しなければならない最優先事項はこれであり、アジア枠などは不要、百歩譲って二の次、三の次に取り組めばよいことではないだろうか。
【おことわり】台湾プロ野球の選手名表記の一部は日本の漢字で類似した文字を代用しています。
たしかに外国人選手の場合、一軍では外国人枠があるから、球団の恣意的な事情によって出場できなくなるおそれもあるからある程度移籍の融通をきかせてあげたいというのもあろう。そもそも助っ人であり、ある球団の構想から外れたら、別の球団に働き場所を求めるのは当然だという考え方も成り立つ。しかしそんな正論が吹っ飛ぶくらい現状は勝ち組外国人選手の思うがままという状況であると敗戦処理。には思えるので何らかの対策をと言いたいのだ。
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